今、最終の仕上げに入った建築中のグループホーム。一部の植栽が竣工条件になっており、5本の木を植えるのに工事管理業者が私に75万円の見積もりをよこしました。「ざけねんじゃねぇ!寝ぼけているのか!」と突っ返してしまいました。何故か、と言えば木のコストが一本いくらぐらいか、運賃がいくらで、植えるのに何時間かかりそれがいくらか積み上げれば逆立ちしてもそんな数字にはならないのです。焦った管理会社は他の見積もりを取り始めます。私はどうせできないだろうと高をくくり、弊社の出入り業者に見積もりを取ったら20万円強。工事業者には「そこはこちらでやるから手を引け」と指示をしました。

正直工事のやり方全般を見ていると業者のコストは15%、作業効率が15%の合計30%の費用は落とせたと思います、私のやり方をすれば、です。ただ、私はそこに時間を割けないのです。だから多少のサービス費用という名目の「下手料」をばら撒かないと出来ないのは分かっているのでそんなにきつい予算編成はしなかったのであらかた枠に収まったわけです。

日本生産性本部が出している日本の労働生産性を見て頂くと一発でわかるのですが、就業者一人当たりの付加価値額の推移をみると驚くことに1995年から2022年までほとんど変わっていないのです。つまり、従業員が稼いでいないわけです。特に下がっているのがサービス業で顕著に悪いのが飲食業です。目も当てられないぐらい下がってしまい、コロナから回復できないのです。

海外との比較でみると就業者一人当たりの労働生産性は日本が81500㌦に対してカナダは106000㌦、アメリカは153000㌦でランク的には日本はOECD内で29位です。もちろん、為替の問題はあります。がそれでも低いと言わざるを得ないのです。

原因も分かっています。日本はクビを切れないこととチームワーク主体だからです。その為に大手企業は子会社関連会社を何十、何百社と抱え、そこに出向転籍させるという技を使うことで本体を一定の質に保つという見せかけをします。50代半ば以降の年齢層はどれだけ一流企業に入社しても今頃は関連会社で本体とは永久の別れの人がほとんどのはずです。

この日本独特のやり方について善悪は問いません。それは日本の根幹に触れるからです。では海外ではクビが切れるのになぜ物価が高いのか、と言われればこれも簡単だろうと思います。企業の要求レベルに対して労働者の質が均一ではなく、特上でもないからです。マネージメントは日本より論理的で効率的ですが、その下は別世界なのです。先ほど工事業者の例を出しましたが、それを最高水準まで直接管理すれば3割のコストカットできると思いますが、私が一人でそれは出来ないのでしょうがなく上乗せ費用を払っているということです。これが今の物価高の主因だと思います。

これが改善できないかぎり世の中の物価は上昇する一方だし、労働生産性は伸びないということになります。給与を上げたい会社があるなら今の3割高を提示することさえできますが、従業員には飴とムチということになるでしょう。そこはわかっていただかないといけません。アメばかりのおいしい社会は存在しえないのです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月13日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?