ウィーン14区にある北朝鮮大使館が閉鎖されるのではないか、という疑念があった。オーストリア外務省の外国大使館欄を見る限り、北大使館の住所、電話番号は変わらないから、現時点では「閉鎖されない」と考えていいが、北朝鮮がここにきて在外公館の見直しを実施中で、欧州ではスペイン大使館も閉鎖されたというニュースが流れてきたばかりだ。
ウィーンの場合、スイスのジュネーブと同様、北朝鮮が関係する国連工業開発機関(UNIDO)や国際原子力機関(IAEA)など国連の専門機関の本部があるから、北側は閉鎖しないだろうと考えてきたが、2016年、ウィーンの北大使館も閉鎖かという情報が流れたことがあった。
当方は当時、オーストリア連邦法務省管轄の土地台帳まで調査し、大使館の所有者に変化がないことを確認するまで落ち着かなかった。幸い、当時の北の金光燮大使(大使夫人の金敬淑女史は故金日成主席と金聖愛夫人との間の長女)と話す機会があった。同大使に「大使館は売りに出されるという情報が流れているが、事実か」と単刀直入に聞いた時、金大使は少々驚いた表情を見せながら、「初耳だ。いっておくが、われわれは今後も100年以上、オーストリアに留まるよ」と強調したことを思い出す。
欧州最大の北大使館は1981年5月26日に土地とともに購入している。その広さは建物758平方メートル、庭園3578平方メートル、計4336平方メートルだ。建物は1949年4月2日、「Denkmalschutz(記念物保護)に基づき、公共利益の記念物保護対象」となっている(オーストリア連邦法務省作成の「土地台帳」Grundbuchから)。ウィーンの北大使館の建物は歴史的建物としてさまざまな制限があるだけに、新しい買い手を見つけ出すのは難しいという事情がある(「北大使『大使館は売らない』と言明」2016年10月2日参考)。
ウィーンの北大使館は現在、崔康一大使(外務省前北米局副局長=Choekangil)だ。同大使は2020年6月30日、ウィーンのホーフブルクの大統領府でファン・デア・ベレン大統領に信任状を手渡した。崔ガンイル氏は27年間大使を務めた金光燮大使の後任だ。ちなみに、ウィーンの北大使館はスロベニアとハンガリーをカバーしている。