誤謬の形式

A氏は同情に値する人物なのでA氏にとって利益となる言説は真である。

<例>

<例>

兄:それは僕のお菓子だ。返してよ(怒) 妹:違う。私のお菓子よ(泣) 母親:お兄ちゃん、可哀そうだと思わないの。お菓子を妹にあげなさい。

「可哀そうだから~しなさい」というのは「同情に訴える論証」のイディオムです。

<事例1>子宮頸がんワクチン

<事例>『報道ステーション』2016/07/27

富川悠太アナ:様々な症状に苦しみながらも若い女性達がありのままの姿で、実名で訴えている。その姿を国がどう受け止めていくかですよね。

後藤謙次氏:今回のワクチン問題、二つ重要な点を抑えておかなければいけない。一つは国がある時期からワクチン接種を積極的に進めたという事実。その一方でその接種後に苦痛を訴えた若い少女・若い女性達がいるという厳然たる事実がある。国は因果関係の究明のスピードをもっと上げて、彼女達が救われる状況を早く作ることが一つだと思います。さらに救済の問題については、今も一定程度の国の支援はありますが、更なる救済の手を差し伸べると。それは彼女達がああいった形で画面にも映っても訴えている覚悟をどうくみ取るかということだと思います。

『報道ステーション』では、子宮頸がんワクチンについて訴えを起こしている女性の「覚悟」を根拠にして更なる救済の手を差し伸べるよう意見しています。

子宮頸がんワクチンは、世界的な調査データから重篤な後遺症との間に医学的な因果関係が認められないことが明らかになっています。若い女性達が体に変調をきたしていることは極めて不幸なことですが、この原因を子宮頸がんワクチンに求めるのは帰納的に不合理です。科学雑誌のネーチャー誌は、医学的知見を軽視するこのような日本のマスメディアの偏見的報道に対して強い危惧を表明しています。

<事例2>働き方改革と過労死

<事例2>衆・予算委員会2018/02/20

山井和則議員(国民):裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度を、過労死の御遺族の方々は「過労死促進法」と呼んでおられるんですよ。過労死の御遺族が涙を流してまでやめてくださいと言うことを押し切るのが働き方改革なんですか。人の命を守るのが国会じゃないんですか。働き方改革って、与党と野党がけんかして、過労死の御遺族の反対を押し倒して、無理やり強行採決するものなんですか。

委員会の論点は、新たに制度設計にされた裁量労働制や高度プロフェッショナル制度が、労働者の過労死を抑止できるかどうかであり、このことは過去の制度の犠牲者になった過労死の御遺族が置かれている悲しむべき状況とは無関係です。

<事例3>よくもそんなことが

<事例3>国連気候行動サミット2019/09/23

グレタ・トゥンベリ氏:全てが間違っている。私はここにいるべきではない。大西洋の向こう側の学校に戻るべきだ。しかし、あなた達はみんなで希望を抱いて私達若者の元にやって来る。よくもそんなことができるものだ。あなた達は空っぽの言葉で私の夢と子ども時代を奪った。ただ、私はまだましだ。人々は苦しんでいる。人々は死んでいる。全ての生態系が崩壊している。

16歳の環境活動家のグレタ・トゥンベリ氏は、各国首脳らに温室効果ガスの削減を訴えました。ただ、そのこととグレタ・トゥンベリ氏の夢と子ども時代が奪われたことは何の関係もありません。環境活動に忙しいグレタ・トゥンベリ氏が可哀想なことと、その主張を受け入れることとは分けて考える必要があります。

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