また、コスト削減の付随効果として、潜在的にリスクが増加している可能性も否定できない。例えば、典型的には、管理の高度化によって在庫を最小化すれば、確かにコスト削減にはなるだろうが、他方で、物流施設や生産拠点における事故等により、商流が切断される事態となれば、大きな損失が発生するわけで、その損失は削減されたはずのコストを上回り得るのである。
こうした事態は、保険料というコストを削減するために、保険を解約するようなものである。無駄な保険を解約することは、保険料の削減ではなく、付保の適正化による保険料の適正化である。同様に、コストの適正化はあっても、コスト削減はあり得ず、資本利潤についても、適正な資本利潤から適正な配当がなされ、残余が新たな価値の創造のために再投資されるだけのことである。
経営課題として、コスト削減や資本利潤の最大化を掲げることは適正ではないのである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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