ラマダン期間にテロ活動を行ったイスラム派過激組織もある。例えば、2016年7月、バングラデシュの首都ダッカのレストランでイスラム過激派の襲撃テロが発生、日本人7人を含む20人以上が殺害されるテロ事件が起きた。犯人はイスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)だった。
中東問題専門家のアミール・ベアティ氏は、「ラマダン期間、紛争が絶えない理由はイスラム寺院の説教者にある。彼らが寺院に集まった教徒たちにコーランを通じて政府批判や紛争勢力への中傷などを繰り返し、信者たちを煽るケースが少なくないからだ」という。同氏によると、イスラム教徒はキリスト信者のように個人意識が成長していない。彼らは集団で行動をする。ラマダン期間はその機会が普段より多い。だから、断食明け後、デモや政治活動に走るケースが出てくる。ラマダン休戦が実現できない理由はイスラム教徒の集団主義と指導者の憎悪説教にあるという。
参考までに、日本外務省海外安全ホームページには、ラマダン期間中の海外渡航・滞在に関して、「3月11日(月)頃から4月12日(金)頃の期間は、イスラム教のラマダン月及びラマダン明けの祭りに当たります。上記期間中やその前後はテロの脅威が高まる傾向があります。特に、今年はイスラエル・パレスチナ情勢を受け緊張が高まっていることに留意する必要があります」と注意を喚起している。
ラマダン期間中、ガザ区でイスラエル軍の攻撃が続き、パレスチナ人に多くの犠牲が出るようだと、中東のイスラム過激テロ組織がそれに抗議し、テロ行為に走る危険性が高まる。
なお、世界のキリスト教会では今月31日、復活祭を迎える。イエスが十字架上で亡くなり、その3日後に蘇ったことを祝うキリスト教最大の祝日だ。ラマダン期間中にキリスト教最大の祝日のイースターを迎えるわけだ。それが吉と出るか、凶と出るかは分からない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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