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2015年の夏

悪夢の始まり。

その夏、その家は薪置き場を作っていた。

秋、大きな音をたてて改装工事が始まった。挨拶や予告は一切ない。

やがて煙突のようなものが見えてきた。

改装工事は薪ストーブ設置工事だった。予告するはずがないことは当然だろう。

周辺が懸念した嫌な不安は的中した。

造園業者が、薄汚い大量の生木伐採木片を運んできた。

2016年2月

悪夢の薪ストーブが焚かれ始め、煤煙悪臭が撒き散らされる。

一帯がものすごい脂くさい異臭で充満。家の中までくさい。逃げ場は無い。

煤煙が撒き散らされ、あっちこっちに黒褐色の微粉末が付着している。

無風の冷え込んだ日にはものすごい木酢臭が漂い、屋外に出れば呼吸が苦しくなる。

咳き込んで歩いている近所の人たちはコロナのはるか以前からマスク着用。

子供たちは「くさいー」と咳しながら歩いている。かわいそうに。

空は時には充満した煤煙で真っ白になる。冬の空は澄んで青いはずなのに。

最初は???だった近隣住民たちは、薪ストーブ家屋の場所に気が付く。

しかし、誰も何も言わない。ただ小声で「くさいねー」と呟くだけ。