市場は疑心暗鬼の状態がよい

日銀が異次元金融緩和の枠組みを転換したのを、あざ笑うかのように円相場は27日、1㌦=152円目前まで下落(28日は寄り付き151円30銭)し、34年ぶりの円安水準を記録しました。

鈴木財務相は「行き過ぎた動きにはあらゆる手段を排除せずに断固たる措置をとる」と発言し、政府関係者も「投機的な動きがある」と指摘しています。投機筋を敵に回し、けん制しているつもりでしょう。

私は「政府・日銀の言動が円安投機を招いている。そこをもっと意識すべきだ」と、思います。円安の原因はかれらの言動によるところは大きく、投機筋のせいにするのは本末転倒です。

最近、「日銀は市場との対話を重視し、市場に対する丁寧な説明、コミュニケーションが必要である」が決まり文句になっています。そんなことを続ければ、市場の見方が一方通行になり、円安とか株高とかに賭け、儲けやすくなります。

日経社説は「より丁寧な市場との対話や精緻な情勢判断を求めたい」(3月20日)と主張しました。読売社説は「日銀は金融政策に混乱が生じないよう、警戒を怠らないようにしてもらいたい」(同)と、同様の主張です。

株式相場も為替相場も、様々な見方、予測が入り混じり、市場の取引を通じて調整されていく。市場が「疑心暗鬼」の状態に置かれることが「市場機能」を発揮する前提になる。ある種の混乱状態から市場が方向性を見出していく。それが「市場機能」というものでしょう。

政府・中央銀行は市場を不必要に誘導してはいけない。説明も必要最低限にし、あとは市場に判断させる。それがいつのころからか「中央銀行と市場関係者のコミュケーション」が金科玉条のようになった。

植田日銀総裁は19日の金融政策決定会合後、記者会見で「大規模な緩和はその役割を果たした」といいつつ、「緩和的な環境を維持することが大事という点に留意しつつ金融政策を行っていく」と、発言しました。

後半の「緩和的な環境を維持する」というべきではない。市場が混乱するといけないと思ってそう発言したのでしょう。今後、どうなるかは市場で様々な観測、予測が交錯して流れが固まっていくのが好ましい。しかも金利は0.1%程度しか上がらないから、安心してと投機ができる。