「ビラコチャ」とう神の名を聞いたことがあるだろうか。
ビラコチャはインカ帝国において、太陽神であり最高の創造神として崇拝されていた。そして、黄金もまた神聖なものとされたが、インカの人々にとって金には物質的な価値はなく、ビラコチャの血や太陽の汗の象徴であった。
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ノンバイナリーの創造神ビラコチャ
インカおよびプレ・インカ文化において、ビラコチャは性別を持たないノンバイナリーの創造神とされていた。信者たちはその神聖さから、神の名前を口にすることを避け、代わりに“光”を意味する「イリャ」や“始まり”を意味する「ティッキ」、さらに“教えを授ける者”を意味する「ウィラコチャ・パカヤカチク」といった呼び名を用いた。
プレ・インカ時代の南米には高度な文明が存在し、金細工の技術は非常に発展していた。金は宗教儀式に欠かせないものだったが、その信仰が後に悲劇をもたらした。スペインの征服者たちが到来し、金への執着心からこれらの文明を破壊したのである。
1533年、スペインの征服者フランシスコ・ピサロはインカ帝国最後の皇帝アタワルパを処刑した。ピサロはアタワルパにキリスト教への改宗を迫り、インカの黄金を溶かすよう命じた後、彼を絞殺したのだ。
その後、インカ文明が滅亡すると、金の神聖さも忘れ去られた。代わりに、今日では“ブラッドゴールド(血の黄金)”と呼ばれる違法な金の採掘や密輸が世界中で横行し、かつて神聖とされた地域社会に大きな打撃を与えている。