FDP党員には、ギド・ヴェスターヴェレ党首時代がトラウマとなっている。ヴェスターヴェレ党首下のFDPは2009年の連邦議会選で得票率14.6%を獲得し、第2次メルケル政権(2009年10月~13年12月)に参加したが、2013年の連邦議会選では議席獲得に必要な5%のハードルすらクリアできず、連邦議会の議席を失った。リントナー氏は間違いなくそれを避けたいところだ。SPDと緑の党に金融政策の根本的な変更を行う用意がなければ、FDPは近いうちに政権から離脱するのではないかというのだ。
いずれにしても、ショルツ連邦政府の行方はFDPの出方にかかっている。FDP内の多くのリベラル派はリントナー党首に対し、ヴェスターヴェレ党首時代のように政権にしがみ付いて盲目的に破滅に突き進むのではなく、1982年のハンス=ディートリッヒ・ゲンシャー時代のように、党にとってマイナスと判断すればさっさと政権から離脱することを勧めているからだ。
リントナー党首には、ヴェスターヴェレの政権継続の道かゲンシャーの政権離脱の道かの2通りの選択肢がある。同党首が後者を選べば、不人気なショルツ連立政権は即幕を閉じ、早期総選挙の実施となる(ドイツ民間ニュース専門局ntvサイト11月21日のヴォルフラーム・ヴィマー記者)。
なお、ドイツ民間ニュース専門局ntvによると、党の支持率(11月21日)では野党第1党のCDU/CSUが30%、それを追って極右「ドイツのための選択肢」(AfD)が21%、SPD15%、緑の党14%、FDPは5%だ。ショルツ政権は3党を合わせても支持率34%と安定政権の50%の過半数からほど遠い。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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