「健保組合の反乱」で改革は実現できる

根本的な問題は、国民皆保険という建て前が最初から擬制だったことだ。健康保険はもともと企業の福利厚生の一部を政府が支援するもので、全国民が加入するものではなかったが、これを岸信介が全国民に拡大した。

国保の納付率は低いため、その赤字を健保組合が埋めた。国民全員を強制加入させる賦課方式の健康保険は基本的に税金だが、老人医療の赤字が出たら健保組合の「支援金」を流用できるためモラルハザードが生まれ、大幅な過剰医療が発生している。これが医療保険の最大の問題である。

この解決は困難だが、基本的には国民皆保険をやめるしかない。後期高齢者も含めて窓口負担を一律3割とし、それでも足りない赤字は税(消費税もしくは社会保障目的税)で埋める。高額療養費の上限は引き上げ、負担能力のない人は直接給付で救済する。

他にもいろいろな改革案があるが、大事なことは保険という擬制をやめ、税の規律で過剰医療を止めることだ。医師会に引っ張られる厚労省ではなく、財務省が介入して決めるしかない。団塊の世代が後期高齢者になる時期に入り、残された時間は少ない。

それは「シルバー民主主義」だからとあきらめることはない。1999年のように保険者である健保組合が「筋の通らない支援金は出せない」と不払い運動を起こせば、政治が動く可能性もある。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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