アン・ソルは、ユジャにしてはシンプルな真っ白なロングドレス(マケラと並ぶとほとんど結婚式)だったけど、左手は、グレーのドレスにお着替え。確かに、この曲に眩しい白は似合わない。

この曲、第一次世界大終了100年を記念して、18年11月11日に、ヴェルサイユ宮殿でウィーンフィル&ユジャが演奏した。テレビ越しながらも、ユジャの気迫ある演奏に聴き惚れたのを覚えてる。

ようやく生で初めてこの曲を、しかもユジャで聴けてなんと嬉しいこと。慟哭、悲壮、諦念、希望、勇気、、、。そんな感情が入り乱れる、左手の可能性が無限であることを証明する素晴らしい曲と演奏。オケもよかったのだろうけれど、ユジャのピアノの圧倒的な存在感に隠れて特別な感想なし。

それにしても、同じ演奏会の中で、ラヴェルの、陽と陰の傑作2曲を一緒に、しかも世界最高峰のピアニスト&指揮者で聴けるなんて、幸せすぎる。

ラストは、バルトーク「中国の不思議な役人」。マケラの魅力でそれなりによいけれど、ユジャx2曲の後では、ちょっぴり霞む。

今シーズンは、マケラ&パリ管たくさん聴くので、感動演奏に巡り合えるといいな。次回は、11月、アレクサンドル・カントロフをソリストに迎えて。楽しみ。

2時間半近くの長く贅沢な演奏会。4曲中3曲は、バレエファンにはお馴染み。牧神でヤンヤンやエルヴェ、ニコラ、エレを思い出し、アンソルでマリ=アニエス、ミリアム、マチアスを思い出し、中国でカデール(と番外でアレッシオ)を思い出す。いい時代だったなぁ。

編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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