では大阪万博。今、延期を唱えている声の本音の理由がもう少し知りたいというのが正直なところです。万博と能登半島震災の復興は同次元なのか、というのが素直な疑問なのです。私は震災復興と万博は比べる尺度が違うと思うのです。それより能登半島については今、考えるべきはシンプルに元の形に戻す復興がよいのか、将来的リスクが高いので移住を含むプランされた復興にすべきかといったもっと大きな枠組みの議論を先にすべきなのですが、それをやる気配は全くないのです。これは落ち度だと思います。
東日本大震災の際、原発事故で福島の沿岸部にお住まいの方は移住を余儀なくさせられました。あの場合は選択肢がなく強制力を持ったものでした。では会津など福島内陸部に移住した方が今、また住めるようになった元の場所に戻っているかといえば極めて低い戻り率です。強制移住は住民に相当の精神負担があったと思いますが、「住めば都」であることと知り合いは必ずできる、だから寂しさは落ち着くものではないか、という仮説はもう少し分析すべきかと思います。
次に高市大臣の延期説ですが、資材高騰を理由にしていました。これ、回避する方法はあると思います。それは中国に住宅資材が捨てるほど余っているのでそれを買い付ければよい、それだけの話です。中国も震災復興で住宅問題が喫緊の課題なら、喜んで売ってくれるでしょう。資源価格は中国の需要動向がモノによっては全体の半分近くになるのです。ということは今起きていることは資材価格の国際価格が高いのではなく、円が弱いこと、これが大きな理由なのです。だから高く見えるだけの話です。高市さんはそこまで考えてほしいと思います。
万博については延期が可能かどうかは博覧会国際事務局との調整が必要です。オリンピックでいうIOCに近い協会であり、日本が勝手に延期できるものではないでしょう。下手すれば損害賠償という問題すら起きかねません。コロナによる五輪延期は世界の同調を得やすかったのですが、今回はそこまで理解が浸透するかわかりません。
ましてや資源高騰とか職人不足という理由に逃げていますが、実際は海外の施設の設計、計画、実施を伴う取りまとめが出来なかったという事務方の脆弱性が遅延の7割の理由であって延期論は日本の実力に疑義が生じてしまいます。
個人的には能登半島震災の復興と万博を絡める議論自体が不毛であり、双方がそれぞれに別々の問題含みなのです。にもかかわらず、万博に矛先を持ってくるという話そのものがこじつけでおかしいのではないかと感じます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月29日の記事より転載させていただきました。
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