他方で、価値が不変で、故に価格も不変であるとき、コスト削減に成功すれば、利益が拡大する。故に、企業は、科学技術的に新しい製造方法を開発し、また経営技術的に在庫管理等を高度化させることで、コスト削減競争をしているのだとも考えられる。
しかし、技術革新によってコスト削減が可能ならば、その低下したコストが新たな適正コストになるのだから、実は、革新によるコスト削減幅と同じだけ、価値が低下しているはずである。故に、技術開発競争の結果として、技術革新が一般化すれば、販売競争によって、価格は低下していくので、価格低下は、価値低下を反映したものと評価できるわけである。故に、この面からも、コスト削減の競争は、成長につながらないはずである。
ただし、技術革新によるコスト削減に先行して成功した企業には、一般的な価格低下に至るまでに、先行者としての利益の拡大が生じる。この先行者利益が新たな価値創造のために再投資されるのならば、経済成長への動因になり得るから、コスト削減競争は、新たな価値創造のための資金調達としてのみ、重要な意味をもつわけである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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