効率的な市場のもとでは、価格に高い低いはなく、適正さしかない。ある商品について、買い手は低い価格を求め、売り手は高い価格を望むとしても、双方が対等の立場で歩み寄って、ある価格で取引が成立すれば、その価格は適正なものとして、双方にとって高くも低くもないわけである。そして、適正な価格は、その商品の価値を反映するものとして、公正なのである。

しかし、現実の経済は、そのような理想的な効率性のもとにはない。理想的状態にある経済は、静的均衡のもとで死んだ経済なのであって、生きた経済は、価格と価値が常に一致しないなかで、その不一致が一致する方向に絶えず動くことで、動態的に成長していると考えられる。

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実際、顧客からすれば、価値と価格が一致していては満足がないわけで、顧客が価格以上の価値を見出すことで、新たな需要が創造されて、経済は成長しているはずなのであって、経済成長の動因が競争であるといわれるのは、企業は、顧客が価格以上の価値を見出すように、新たな価値をもつ商品の開発競争を行っているからである。

競争とは、本質的には、新たな価値を創造するための競争だが、新たな価値の創造は、経済の構造変化を招き、古い価値を破壊する。つまり、競争は、一方で、価値を創造し、価値を増加させるが、他方で、価値を破壊し、価値を低下させ、価値の低下は価格の低下につながる。そして、価格の低下は、コストの低下を要求し、そこにコスト削減競争が生じるわけだが、その競争は、成長の源泉ではなく、構造変化の結果にすぎない。