2015 年のNational Academies of Sciences, Engineering and Medicine(米国)による報告書では、毎年、米国成人の5%が診断ミスを経験しており、大半の人が生涯に少なくとも1度は診断ミスを経験すると推測されている。 情報量・知識量が人間の記憶量をはるかに上回る上に、忙しさに追われた医療現場では、直感的な判断を強いられることが多くなるので、ミスが多くなるのは当然だ。
時間的ゆとりが生まれれば、ゆっくり、いろいろなことを考慮しつつ、論理的で、計算的で、意識的な思考であるシステム2思考が可能となり、それに、人工知能などを活用すれば、診断ミスは激減するはずだ。稀にしか遭遇しない病気は頭に浮かばないし、典型的なでない症状の場合、その判断は難しい。しかし、 日本では診断ミス=悪のような固定観念で、現実を見つめることさえタブー視されている。
質のいい医療を目指すためには、医療の現実の課題に目を向けて、それを改善していくことが不可欠だ。科学には、客観的な事実に目を向けることが絶対的に必要だ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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