本気度を示せない日本
一方で日本はどれほどの本気度を示せているだろうか。日本においては、防衛装備品の第3国への輸出の在り方などが常に問題となってきたが、GCAPの国際共同開発・生産も例外ではない。これについては、自民党が第3国への輸出規制の緩和を求めているが、公明党が慎重な姿勢を示したことで、結論が先送りされている。これに対して英国側は強い懸念を既に表明しており、日本の本気度が疑われかねない状況にある。
慎重な立場の人々は、殺傷能力を持つ装備品を第3国に輸出することは、憲法が謳う平和主義に反するという。だが、これは日本の一国平和主義が却って世界の平和にとってのマイナス要因でしかないことを理解していない者の発想である。日本が装備品を輸出するとすれば、人権を歯牙にも掛けない独裁国家に輸出することなど考えられず、輸出先は当然、自由民主主義を重んじる友好国となるだろう。この自由民主主義諸国の防衛力強化に貢献することが、平和主義に反するというのだろうか。
独裁国家は日頃から兵器開発に熱心であることから、当然兵器の輸出も手広く行ってきた。途上国などがこのような兵器を、価格が手頃であるという理由や、他に選択肢がないという理由で購入すれば、その国は兵器の輸入先である独裁国家の影響下に置かれることになる。このようにして影響力を広げていった国を、日本は隣でよく見てきたはずではないか。
日本は途上国などに選択肢を提示し得る数少ない国であるが、自らその役割を放棄してきた。独裁国家の影響力拡大を抑制し、自由民主主義諸国の防衛力を強化することの方が世界の平和にとって余程プラスになろう。
むすび戦闘機の輸出入は国家間の関係強化に絶大な効果を持つ。運命共同体となると言っても過言ではない。それは歴史が物語っている。
日本は戦後、平和国家として生きてきたという自負があるのならば、輸出する戦闘機にその自負を託して、平和国家としての影響力を積極的に行使すべきであろう。今こそ、次期戦闘機開発のみならず平和に対する日本の本気度が問われている。
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橋本 量則(はしもと かずのり) 1977(昭和52)年、栃木県生まれ。2001年、英国エセックス大学政治学部卒業。2005年、英国ロンドン大学キングス・カレッジ修士課程修了(国際安全保障専攻)。2022年、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)博士号(歴史学)取得。博士課程では、泰緬鉄道、英国人捕虜、戦犯裁判について研究。元大阪国際大学非常勤講師。現在、JFSS研究員。 論文に「Constructing the Burma-Thailand Railway: war crimes trials and the shaping of an episode of WWII」(博士論文)、「To what extent, is the use of preventive force permissible in the post-9/11 world?」(修士論文)
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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