しかしながら、2009年の民主党政権の登場で、禁句扱いは解消され、さらに2012に政権復帰を果たした故安倍晋三氏の「女性活躍」政策の導入によって潮目は大きく変わった。というのも、バッシング運動の中心にいた安倍氏自身がジェンダー平等と親和性のある政策を打ち出したからである。今やジェンダーは人口に膾炙し、少なからぬ人がジェンダー平等を日本社会が実現すべき事柄だと捉えるようになった。
さて、「女性活躍」政策、果たして女性活躍を推し進めることができたのか。図1に2002年から2022年までの女性就業率の年次推移を示した。
20年間の伸び率は約15.9ポイントであるが、当政策が導入された2013年以前と以後を比べると、以前の伸び6ポイントに対し、以後は9.9 と後者のほうが明らかに大きい。
さらに、図2は2022年時点の就労率を北欧5カ国及び他のG7諸国と比較したものであるが、アイスランドを除く北欧諸国と日本の差は精々2、3ポイント、また他のG7諸国と比べても遜色はなく、女性の労働市場参加に関しては先進国並みと言えそうだ。
とはいえ、労働市場における女性の立ち位置は決して望ましいものではない。女性の平均給与(2021年)は男性のそれを100とすると75.7%、また非正規雇用率(同年)は男性の21.8%に対し、女性は約2.5倍の53.6%と依然著しい格差がある(男女共同参画白書令和4年度版)。
図3は女性の年齢階級別にみた就労率と正規雇用率であるが、以前のような出産/育児で仕事を中断する傾向(所謂「M字カーブ」)は改善傾向にある一方、非正規雇用に転じる女性が非常に多い。
OECDによると、日本の女性管理職の割合(2022年)はデータが公表されている加盟国の中で最下位の12.9%、ちなみに加盟国平均は34.1%である(OECD. Stat, Share of female managers)。
加盟国には女性役員クオータ法のような女性管理職を強制的に増やす政策を導入している国も多いので、こうした積極策の欠如が日本の遅れの大きな要因ではある。が、非正規雇用という不安定な労働形態も、昇進の弊害になっているのではないか。クオータ法制を導入しても人がいないという事態にもなる。
超高齢社会の日本の労働市場において女性は必要不可欠な労働力である。実際、上記のように女性の就労率は他の先進国に引けを取らないレベルに達している。にもかかわらず、こうした女性の就労意欲は正当に評価されず、副次的な取扱いを受けている。女性の雇用形態を改善し、昇進の機会を増やして、管理職の比率を上げなければ、その労働意欲はやがて削がれてしまう。
雇用形態の改善にしろ、クオータ法制の導入にしろ、政治の責任である。ところが、肝心の政権党がジェンダー平等にはほど遠い有様だ。日本社会はジェンダー平等に向かって漸次進んでいる。だが、政治だけは置いてきぼり、むしろ足枷である。
そこで、自民党には派閥の裏金問題に関与した全員について次期選挙での公認を取消し、空白になった全選挙区に女性を立てるくらいの思い切った改革を期待したい。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?