先月末、CNN香港支局の若い記者から日本のジェンダー平等の現状についてオンライン取材を受けた。記者は2月22日に行われた愛知県稲沢市国府宮神社の「はだか祭」に女性が初めて参加したことに関心を持ち、この出来事は日本のジェンダー平等の進展を示すものと考えられるのか、見解を聞きたいとのことであった。
稲沢の祭は1200年以上の歴史を誇る由緒ある行事である(NHK NEWSWEB、2024年2月22日)。改めてその模様を紹介した東海テレビをYouTubeで視聴したが、女性陣のリーダーと思しき年配の女性が安堵とともに達成感に満ちた晴れやかな笑顔で参加できた喜びを語っていたのが印象的であった。
これに限らず、最近は男性限定の地方の伝統行事に女性の参加が認められる傾向にあるようだ。高齢化と人口減少による担い手不足がその背景にあるが、女性たちの強い要望とそれを後押しする社会の空気が解禁を実現させていると考えられる。
ジェンダー平等に対する日本社会の受止め方には確かに変化が生じているように感じる。20年前を振り返れば、変化は決して小さくないことが分かる。
2000年代初め、フェミニストや女性の権利を擁護する人たちを攻撃し、ジェンダーは性差を消失させて人間を中性化する悪徳の用語だと非難する「ジェンダーバッシング」なる政治運動が国会と地方議会を巻き込んで起こった。
背景には、1990年代にフェミニストの発言力が目立つようになり、伝統主義を掲げる保守派に脅威を与えるようになったことがある。危機感に煽られた保守派は、「ジェンダー」という言葉を敵視し、やがて国や地方の公文書において禁止用語のように扱われ、社会的にも使用が憚られるようになった。