しかし、価格には、高い低いはなく、適正さしかないのではなかろうか。ある商品について、買い手は低い価格を求め、売り手は高い価格を望むとしても、双方が対等の立場で歩み寄って、ある価格で取引が成立すれば、その価格は適正なものとして、双方にとって高くも低くもないわけである。そして、適正な価格は、その商品の価値を反映するものとして、公正なのである。同様に、投資家は高い資本利潤を求め、企業は低い資本コストを望むとしても、理想としては、双方の対話を通じた相互理解のもとで、事業のリスク特性等の固有の性格に応じて、適正な資本利潤が実現されるべきである。

ならば、事業とは、適正価格で買って、適正価格で売ることに帰着するであろう。商品生産者は、原材料から労働や資金に至るまで、商品生産に要する全ての要素の調達について、供給者に対して適正な対価を支払うわけだが、その対価がコストなのだから、コストとは、それらの構成要素に付された適正な価格なのである。そして、適正なコストに適正な資本コストを付加して、商品が適正価格で売られるとき、経済は、価格と価値の一致のもとで、適正価格による取引の連鎖として、公正なものになるわけである。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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