ブータンの悲劇、私たちには他人事でしょうか?
ですが、これは私たちにとって他人事でしょうか? 情報に晒されたことで幸せを見失ってしまったブータンの人々、私たちに似ていませんか?
私たちも日々、さまざまな情報に晒されています。SNS上の誰かの充実ライフ、高年収な友人知人の噂話、「もっと年収をあげられます」「もっと節税できます」「もっとキレイで健康になれます」「あなた損してますよ」などと謳うネット広告、これらの情報に影響を受けて、「私、大丈夫かしら…」などと心配になることはありませんか?
自分への心配=不幸ではありません。しかし、私たちの研究でも自分についてクヨクヨすることが「うつ病」の入口になることが知られています。幸せを感じにくくさせることは間違いありません。そう、ブータンの人々の幸福感の大きな下落、私たちにも他人事ではないのです。私たちはこの情報の渦の中でどうすれば良いのでしょうか?
福岡のバンドがオファーを断った理由さあ、ここで“Date of Birth”がヴァージン・グループのオファーを断った理由をご紹介しましょう。この理由には、私たちが情報の渦の中でどのように心の健康を保てるのかを教えてくれる重大なヒントがあります。聞く人が聞いたら、「え、そんな理由で…」と驚くことでしょう。
その理由は「福岡を離れるのがめんどうくさい」というものでした。実はこのオファー、ロンドンに住むことが条件になっていました。そして彼らは世界的な活躍やそれに伴う名声やビッグマネー、セレブたちとの交流といった華々しい毎日よりも、「福岡に住み続ける」ということに価値を見出していたのです。
そう、彼らは「このままの私たち」に満足していて、「このままの私たちで出来る範囲の音楽活動で十分…」という自分たちの物語、言い換えれば自分たちの良き在り方(Well Being)がすでに確立していたのです。
彼らの中の魂のようなものが「福岡に住み続けたい」と訴えていることをよく知っていたのでしょうね。なので、「世界的な活躍も華々しい毎日も興味ありません」と、その情報をシャットアウトできたのです。
近年、このことは情報的健康と呼ばれています。身体の健康も食べるもので変わるように、心の健康も取り入れる情報で変わるのです。自分の心に悪い情報、不要な情報は取り入れない…これが大事なのです。
情報がブータンから幸せを奪ったわけではないここで、ブータンの人々の幸福が奪われた本当の理由がおわかりになったでしょう。情報化ではないのです。「自分はこれでいい、そんな情報は自分には関係ない」と自分の良き在り方に関係ない情報をシャットアウトできるだけの自分の物語がなかったからなのです。
残念ながら人間とは欲深い動物です。そして、損をしないために情報を欲しがる動物でもあります。そして、情報を得ると誰かと比較したり、自分についてクヨクヨしたりしてしまう生き物です。なので、誰もが、“Date of Birth”のように不要な情報をシャットアウトして、情報的健康を達成できるわけではありません。
あなたの「魂」が、あなたの物語を知っていますあなたはどうでしょう?「私はこれで十分…」というあなたの良き在り方の物語、見えていますか?もし、まだ見えていないとしたら、あるいは見失っているとしたら、どうかあなたの「魂」と対話して見つけてください。
「魂」の訴えは時に誰かとの比較や欲に覆い隠されて見えなくなってしまうこともあるでしょう。ですが、良き在り方の物語は、あなたの魂が知っています。誰かとの比較や、「もっと得したい」などの欲をかき分けて、ぜひあなたの魂を見つけてあげてください。
そして、お一人で難しいときはご一緒に考えましょう。日本にはそのための専門職、国家資格キャリアコンサルタントの有資格者がいます。
彼らとその支援団体であるキャリアコンサルティング協議会はあなたとご一緒にあなたの物語を見つけるために、日々、全力で準備しています。彼らとご一緒に考えるのもあなたの役に立つことでしょう。
もちろん、私もそのキャリアコンサルタントの一人です。ぜひ、ご一緒にあなたの物語を整えましょう。
・【ゆるキャリ】第1回 そして、ブータンは幸せの国ではなくなった:相談のプロが提案する意外な幸せを守る方法とは?
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杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授) 臨床心理士(公益法人認定)・公認心理師(国家資格)・1級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)。 1990年代後半、精神科におけるうつ病患者の急増に立ち会い、うつ病の本当の治療法と「ヒト」の真相の解明に取り組む。現在は大学で教育・研究に従事する傍ら心理マネジメント研究所を主催し「心理学でもっと幸せに」を目指した大人のための心理学アカデミーも展開している。 日本学術振興会特別研究員などを経て現職。企業や個人の心理コンサルティングや心理支援の開発も行い、NHKニュース、ホンマでっかテレビ、などTV出演も多数。厚労省などの公共事業にも協力し各種検討会の委員や座長も務めて国政にも協力している。 サッカー日本代表の「ドーハの悲劇」以来、日本サッカーの発展を応援し各種メディアで心理学的な解説も行っている。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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