さて、今回、イスラエルは実質、地上戦に入りました。ハマスが予告なしで攻撃した時は国際世論はイスラエルに同調的でした。が、徐々にトーンが変わっていったのはお気づきになりましたか?バイデン氏も人道支援が最優先と言わざるを得ないのはイスラエルがあまりに憤っており、放置すればどこまでやるのか見当がつかず、「見境がつかない」状況になるのを恐れているからです。マクロン大統領もそれを進言しにネタニヤフ首相と会談しましたが、ネタニヤフ首相は「会っただけの聞いたフリ」状態でした。
ネタニヤフ氏にすれば「イスラエルの真の気持ちがわかる同胞など他にいない」というスタンスなのでしょう。今の主攻撃地はガザ地区の北部ですが、地下要塞を壊すだけではハマスは全滅しません。彼らは南部に逃れた一般市民の中に潜り込み、市民を隠れ蓑に使っていることは当然察知しているのでハマスの部隊をどう炙り出すか思案しているものと思われます。また、ガザ北部を実効支配するのか、要塞を破壊して撤退するのかも見通せません。個人的には一時的な実効支配をするとみています。
パレスチナとイスラエルの争いはかつては断続的でした。つまり、戦火があったと思えば割とすぐに停戦をしていました。それは地政学的にも微妙なバランスで成り立っているのがイスラエルという国であり、押しすぎればイスラムだけでなくキリストからも強烈なバッシングが来るのが分かっているからです。
ところがネタニヤフ首相はこの戦争の行方次第では自身の首相の運命は終わります。中途半端ではまずい、というのが氏のポジションであります(それはプーチン氏も同じ)。国を護るという圧倒的な保守的思想のもと、戦時体制を敷き、テロリストの根絶やしを目指す勢いかと思います。
ただ、敵はハマスだけではないのです。はるかに強力なヒスボラなど他の過激派組織がレバノンやシリアに控えており、既に一部でイスラエルと戦火を交えています。仮にイスラエルが両面作戦を強いられたとしても国際世論の動きはウクライナの時のようにはならないはずです。それは冒頭のストーリーが背景なのです。つまりユダヤ人は好かれないのです。
本国以外でユダヤ人が最も多く住むのがアメリカです。700万人はいるでしょう。カナダも多いです。が、国レベルで支援体制を取れるのはアメリカぐらいなのです。英国は態度表明を留保しています。
イスラエルはなぜ、意固地か、といえばそもそもおかれている歴史的、民族的背景が作り出す人種としての血統の濃さ、そしてもう一つがネタニヤフ首相の超保守的思想と自身の政治生命の融合ではないかとみています。イスラエルは引きません。今のように過激派との戦いなら収拾の余地はありますが、仮に、国家同士との戦いになるとそれは非常に困難で解決しにくい泥沼となります。今はまさに瀬戸際にあるとみています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月1日の記事より転載させていただきました。
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