④ イスラエルとパレスチナ自治区を実効支配しているイスラム過激テロ組織ハマスとの戦闘はアラブ・イスラム国で反イスラエル、反欧米の動きが活発化している。ケルマン市の爆発テロにもその影響が見られるか。
ハマスの昨年10月7日のユダヤ人虐殺テロ事件は、2001年の米同時多発テロ事件のように大きな影響をアラブ圏・イスラム圏に投じていることは間違いないが、ただし、ケルマン市テロ事件はあくまでもソレイマニ司令官への報復テロと受け取るべきだ。明確な点は、「10.7テロ事件」は「9.11米多発テロ事件」と同じ大きな出来事である点は間違いない。
⑤ ISKP主導のテロ事件が今後、世界的に多発する危険性は考えられるか。
2015年、16年、欧州には100万人余りの中東、アフリカからイスラム系難民が殺到した。その中にはイスラム過激派テロリストも潜入していた。現在はその数は少ない一方、欧米社会内で過激化するイスラム系難民、移民が増えてきている。その意味で、ローンウルフ型テロ事件が増えることが予想される。それだけにテロを未然に防止することが難しくなってきている。
⑥ イスラム教は大きくはスンニ派とシーア派に分かれているが、ケルマンのテロ事件はスンニ派過激テロ組織のISによるシーア派の盟主イランに対する攻撃という構図が浮かび上がる。
イスラム教過激派対ユダヤ教、キリスト教の対立と共に、イスラム教内のスンニ派とシーア派の対立が激化する兆候が見える。イスラム教徒は「スンニ派とシーア派の対立はイスラム教とユダヤ教との対立より激しい」と指摘しているほどだ。
イスラエルのガザ戦争でイランは、ハマスを支援し、アラブ・イスラム圏を反イスラエル包囲網へと集結させようと腐心している。その矢先にスンニ派過激テロ組織のISのケルマン市爆破テロ事件が生じたわけだ。シーア派の盟主イランの聖職者政権は大きな戦略的痛手を負った。スンニ派対シーア派の対立といったイスラム教の古傷が再び疼き出してきたのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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