新年早々(3日)、イラン南東部ケルマン市で2度、大爆発が起き、100人余りが死亡、数百人以上が負傷するというテロ事件が発生した。ケルマン市の爆破テロ事件はイラン革命後、最悪のテロ惨事となった。
イラン当局は事件直後、「明らかにテロ事件」として、事件に関与した組織、個人に対して報復を宣言した。テロ事件直後、イスラム教スンニ派テロ組織「イスラム国」(IS)は犯行声明を発表した。イラン国営IRNA通信によると、7日現在、事件に関与した容疑者32人が逮捕された。
ケルマン市爆発テロ事件はイスラム過激派テログループの再台頭を告げるものとして、欧米の治安関係者は警戒している。そこでケルマン市テロ事件の背景をもう少し詳細に分析してみたい。
① なぜISは3日にケルマン市で爆発テロを行ったのか。
3日はイラン革命防衛隊(IRG)司令官だったカセム・ソレイマニ将軍が2020年1月、米無人機の攻撃で殺害された命日にあたる。そしてケルマン市は同司令官の出身地だ。ソレイマニ司令官はケルマン市の殉教者墓地に埋葬されている。イラン国営通信IRNAは3日、「イラクの首都近郊で米国の無人機攻撃で暗殺されたカセム・ソレイマニ司令官の追悼式に大勢の人々が出席していた」という。
② なぜISはソレイマニ司令官の命日にテロを実行したのか。
答えは明確だ。同司令官はシリア内戦時、シリア内で暗躍するIS退治を指導した中心人物だったからだ。そのうえ、同司令官はイラン国民の間では英雄視されてきた軍人だ。その命日の追悼式で爆発テロを実施することで、シーア派イランへの報復テロという意味合いも出てくるわけだ。
③ ISは犯行を声明したが、ISはシリア、イラクでの拠点を失い後退してきた。
ISはイランの大半を占めるシーア派住民をイスラム教からの背教者とみなし、彼らを軽蔑している。今回テロを実行したのは、隣国のアフガニスタンで活動しており、パキスタン近くのホラサンに拠点を置いている、通称「イスラム国ホラサン州」(ISKP)だ。
英国のキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)で教鞭を取るテロ問題専門家のペーター・ノイマン教授は、「ISKPは現在最も活発なテログループであり、その起源はアフガニスタンで、最も過激で暴力的なジハーディスト(イスラム聖戦主義者)武装集団だ。おそらく現在、西側諸国で大規模なテロ攻撃を実行できる唯一のIS分派だ」と説明している。ISKPにはアフガンやタジキスタン、ウズベキスタンなどからリクルートされたジハーディストたちが集まっている。