民法611条
果たして家賃減額というのは、実際にあるものなのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「確かに、賃貸物件においてエアコンなどが故障したのに、貸主がのらりくらりと修理してくれない場合、家賃の減額を求めたい気持ちになります。実は、令和2年の大きな民法改正の際、『民法611条』は『賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される』と改正されました。ここでポイントは、『減額される』という言葉です。通常、法律では『●●することができる』という書き方をしており、実際に●●を求めるためには裁判を起こさなければならなかったのですが、『減額される』という言葉は、『賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合』、裁判などをしなくても、当然に、賃料が減額されることを意味します(この改正は、正直、驚きました)。
さて、『エアコンなどが故障した場合』が、『賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合』にあたるかどうかですが、昨今のくそ暑い夏を考えれば、エアコンがなければ『通常の生活』ができないわけですから、賃貸物件を『使用及び収益をすることができなくなった場合』にあたると考えることができます。したがって、貸主が修理をのらりくらりはぐらかすようでしたら、では、『通常の生活ができませんので、賃貸物件を使用できないものとして賃料を下げて払います』と宣言しましょう(ただし、実際に、幾ら、減額できるかは今後の実務の累積が必要でしょう)」