その一方で研究者らは「過度に自動車に依存しすぎることは返って生活満足度を下げるのではないか?」と考えてきました。
例えば、徒歩や自転車でも十分に行ける距離をすべて車で移動していると、運動不足にも陥りますし、ガソリン代を含む自動車の維持費の増加、交通渋滞での騒音やストレスに晒されやすくなります。
ただ今までのところ、自動車の使用頻度と生活満足度の関連性については注目されていません。
そこで研究チームは今回、自動車依存が本当に生活満足度を低下させるのかを調べるため、アメリカの全国調査データを用いて新たに分析を行いました。
生活満足度を下げる「車の使用頻度」とは?
今回のデータは、都市部および郊外に住むアメリカ在住の一般成人2155名を対象とした全国調査から得られました。
この調査は2022年11月にオンラインで実施され、交通手段の選択と好み、通勤パターン、自動車の使用頻度、生活満足度に回答してもらった他、性別や年齢、経済状況などを含む人口統学的なデータまで収集しています。
そしてデータ分析の結果、自動車への依存度が高い人ほど、生活満足度が低下しているとの関連性が見つかりました。
特にこの調査では、自動車の使用頻度がある閾値(いきち)を超えると、生活満足度の低下が起きています。
具体的には、日常的な外出移動の50%以上を自動車に頼っていると、それ以下の使用頻度の参加者に比べて、生活満足度が有意に低下し始めたのです。
その理由について研究者らは、事前の予測段階で示した通り、自動車の使いすぎによる運動不足が気分や意欲の低下を招いたこと、ガソリン代や洗車代を含む自動車の維持費が高くなったこと、交通渋滞での騒音やストレスにより気分の落ち込みが起きやすくなったことなどが原因と見ています。
この結果を受けて、研究者らは「徒歩や自転車の頻度を増やし、自動車の使用を減らすことが日常的な生活満足度の向上に寄与する可能性がある」と述べました。