たとえば原稿を執筆してもらうのに、テーマ、ボリューム、テイストなど50項目に渡るプロンプトを一度に入れたとします。50個も指定をすれば、一度ですばらしい出力結果を出してくれるように見えますが、実際のところ生成AIに50項目も入れてしまうと、生成AIは出力の優先順位について混乱してしまうのです。

人間で例えてみましょう。あなたが優秀なビジネスパーソンだったと仮定します。そして、受発注確認の仕事を上司から依頼されました。この仕事のやり方が、厳密に指定されていたとします。雛形を使ったメール文をお客様に出す。納期の◯月◯日の◯時◯分に間に合うか、◯◯部署の◯◯氏に架電し、配送の確認を取る。納品書が滞りなく準備できているかも、また別部署に確認する。メモの形式にも雛形がある。お客様へのアフターフォローまでも仕事に含められていて、そのメール文にも雛形がある。

こんなに指示があったら、あなたもなにからどう手を付ければいいか、混乱しますよね? むしろ「受発注確認の件、うまくやっといてね」とざっくり言われたほうが、仕事をスムーズに終えられるでしょう。

生成AIと人間は同じものではありませんが、「指示は簡潔にしたほうがいい」という点では同じ。複雑な指示をもらったら、うまくできないのです。また、多数のプロンプトを入れることによって、各項目の出力量も少なくなってしまいます。そのため、30も40もの指示をすれば、それぞれの回答出力がひと言ずつしかない、ということもありえるのです。

すべての条件を毎回イチからプロンプトで入れるのはたいへん

2つ目の理由として、すべての条件を毎回イチからプロンプトで入れるのは、生成AIを使う人間にとってもたいへんな作業である、ということがあります。

そもそも巷のプロンプトが長くなってしまうのは、「私はこういう仕事をしていて、仕事の補佐のためにGPTsを使いたくて……」といった、事前情報まで含めて毎回入力させるものも多いからです。