黒坂岳央です。

LINEヤフーがリモートワーク縮小を発表したことを受け、不満の声が出ている。この件以前に最近、日本企業に先駆けて米国IT企業は次々とテレワーク解除を発表し、そのたびに大きな話題になっている。昨年はテレワークアプリのリーディングカンパニーであるZOOM社が社員に出社要請を出したことも象徴的だった。

テレワーク解除は単に、通勤電車やオフィスワーク、スーツ着用といった面倒さが戻ってくるだけではない。中には人生設計が崩れてしまった事例もあり、これはテレワークが秘める潜在的なリスクだ。

企業が長期的なテレワークを謳っていても、いつ解除されるかは経営層の意向次第だ。こうした潜在的リスクはあらかじめ理解しておきたい。

※筆者はテレワークに否定的なわけではなく、その是非においてはどちらにも肩入れする立場にはない。データに基づいたリスクを取り上げて見解を述べているに過ぎないことを理解した上で読み進めていただきたい。

chachamal/iStock

都心に戻れなくなる人たち

オフィス勤務を前提として、都心にマンションを購入してテレワークを機に地方移住を決めた人もいる。しかし、再びオフィス出社要請が出てしまえば、地方移住をし続けられなくなってしまう。その際、都心マンションを買い直そうにも、この数年間の異常とも言える高騰でもう手が出ない金額になってしまっているということが起きているのだ。

首都圏における新築マンションの平均価格は2020年から現在までのたった4年間で、なんと約2000万円も高くなっている(データは首都圏新築分譲マンション市場動向より)。

こうした現象は日本だけではない。アメリカでは、GoogleやAppleなどIT企業を中心にコロナ禍でリモートワークを導入。これにより、一部の従業員が家賃の高いシリコンバレーを離れ、オレゴン州やテキサス州などの生活費が安い地域に引っ越しをした。しかし、2022年以降、こうした企業が「週3日以上のオフィス勤務」を再導入したため、従業員の中には長時間通勤を余儀なくされるか、再びシリコンバレーに引っ越さざるを得なくなった人もいた。