親欧州派で政府批判を繰り返してきたズラビシビリ氏が退任に追い込まれることで、与党「ジョージアの夢」の重要な対抗勢力が失われる一方、議会の多数を握る「ジョージアの夢」は10月末の議会選挙で不正疑惑に揺れる中、与党寄りの大統領を選出することで権力をさらに固めたわけだ。

親EU派の野党や国民を怒らしたのは10月末の議会選挙の不正容疑だけではない。親ロシア派の与党「ジョージアの夢」のイラクリ・コバヒセ首相が11月28日、EUの加盟問題を2028年まで今後4年間、延期することを決定したことだ。政府の決定に抗議して親欧州派の野党、国民がデモ集会を開いてきた。それに対し、当局は治安部隊を動員し、放水などで議会周辺に集まった国民を強制的に鎮圧している。野党は、政府がジョージアをEUから引き裂き、かつてのソ連の一部であった同国を再びロシアに併合しようとしていると批判している。

ジョージアは2003年の「バラ革命」以降、西側諸国との関係強化を目指し、EUとの協力を進めてきた。EU加盟はジョージアの憲法にも明記されている国家目標であり、長期的な政策課題とされている。1999年にEUとパートナーシップと協力協定を締結。同国はEUとの「欧州近隣政策」(ENP)に参加。そして2014年にはEUジョージア連合協定を結んでいる。協定には包括的貿易協定が含まれ、同国はEU単一市場へのアクセスを得た。2017年にはビザ免除協定が結ばれた。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ジョージアは2022年6月、EU加盟申請を行った。ブリュッセルはジョージアの加盟申請に対して、加盟候補国の地位を付与することを保留した。理由は司法の独立、報道の自由などで民主主義の後退が見られることだ。例えば、政府が2023年に提出した「外国代理人法案」は、ロシア型の法律に類似しており、人権団体や市民社会の活動を制限する可能性があると批判を受けた。同法案は国際的な圧力を受けて撤回されたが、EUはこの動きを加盟交渉の進展を妨げる要因としている。また、ウクライナ戦争を巡るロシアへの融和的な政策が批判されている。ちなみに、人口約370万人の小国ジョージアでは、世論調査によると、国民の80%がEU加盟を支持している。