ウーパールーパーには脳や脊髄、心臓など体の中核となる部分を再生する能力があることが知られています。
さらにスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)による2022年の研究では、ウーパールーパーの脳再生の様子を調べたところ、切り取られた全ての脳細胞の型が復活し、神経も以前と同じように再接続されていることが判明したのです。
再生した脳が以前と同じような神経接続を行うことで、再生した部分も元の機能を取り戻せるという。
そのため、ウーパールーパーの脳再生能力を人間に応用できれば、事故や病気によって失われた脳を再生し、神経を再接続することが可能になるかもしれません。
では、ウーパールーパーが脳を再生する秘密に迫ってみましょう。
研究の詳細は2022年9月2日に科学雑誌『Science』に掲載されています。
目次
- ウーパールーパーの脳再生は「3ステップ」で進行する
- 脳再生では「ありふれた遺伝子」たちが活躍していた
ウーパールーパーの脳再生は「3ステップ」で進行する
人間やマウスなどの哺乳類は、失った手足や脳などを元通りに再生することはできません。
ところがウーパールーパー(アホロートル)の名前で知られる両生類たちには、手足や心臓を再生できるだけでなく、脳や脊髄のような中枢神経すら再生する能力があります。
しかしウーパールーパーの脳再生がどんな仕組みで行われているかを細胞レベル・遺伝子レベルで詳しく調べることは困難でした。
そこでスイス連邦工科大学チューリッヒ校は2022年に、ウーパールーパーの終脳(人間の大脳に相当する部分)において、どのような細胞が再生され、内部でどのような遺伝子が活性化しているかを調べてみました。
するとウーパールーパーの終脳には、カメやマウスの海馬(記憶を司る)や嗅覚皮質(匂いや感覚を司る)にあるニューロンと類似した遺伝子活性を持つ脳細胞が存在することが判明しています。