しかし現在、欧州で活躍する選手も増え、試合もリアルタイムで見られることになったことで、外部の現地通信員を活用するケースが当たり前となり、サッカー記者が海外出張するのは、ワールドカップ予選と本戦くらいとなった。
ACL(AFCチャンピオンズリーグ)2023/24で決勝に進出した横浜F・マリノスを追ってアル・アイン(UAE)との第2戦(1-5/合計スコア3-6で敗戦)のために、敵地のハッザーア・ビンザイード・スタジアムに取材に訪れたスポーツ紙記者はゼロ。辛うじてNHKがニュースサイトで、当時のハリー・キューウェル監督やDF松原健、主将を務めるMF喜田拓也のコメントを掲載するにとどまった。
スポーツ紙におけるサッカー記事の優先度が下がる中、記者たちはジレンマを抱えつつ、異動のチャンスを伺うことは無理からぬことだ。そして晴れて異動の内示を受けるのが、この時期なのだ。
「ジャーナリスト」の裏側
昨日までサッカーを見続け戦術を語っていた記者が、次の日から芸能人のスキャンダルを追ったり、競馬の予想をするといったことが当然のように行われているのがスポーツ紙記者の宿命であり、この世界では「サッカー担当歴ウン十年」という記者を見付ける方が至難の業だ。
サッカー界から離れることが決まったスポーツ紙の記者たちが、それまで培ってきた人脈を生かし、“書き捨て”とばかりに試合日程や移籍の噂を出稿するのはそのためである。
日本では入社試験に合格し、記者職に配属されれば「ジャーナリスト」を名乗れるが、イタリアではイタリアジャーナリスト協会に加盟した上で、18ヶ月の見習い期間の後(あるいはジャーナリズム専門学校を卒業後)、試験で合格することで初めて「ジャーナリスト」として新聞社や出版社と雇用契約を交わせる制度になっている。