水銀中毒はうつ病や記憶喪失の原因となり、最悪の場合は死に至ることもあります。
加えて、エリザベス1世は、抜け毛を隠すためにかつらをつけ始めたのですが、そのかつらも辰砂で赤く染められていたのです。
さらに悪いことに、エリザベス1世は、メイクによる容姿の衰えをメイクによって隠そうとしました。
皮膚が劣化していくにつれ、化粧の量を増やす悪循環に陥ったのです。
それから化粧を1週間もつけっぱなしにすることが多く、鉛や水銀がどんどん体内にしみ込んでいきました。
次第に、彼女は心身ともにボロボロの状態になり、後年に深刻なうつ病を発症したのは有名な話です。
彼女はもはや、宮廷のどの部屋にも鏡を置くことを拒みました。
また記録によると、うつ病の他に、認知能力の低下とせん妄(時間や場所がわからなくなる見当識障害)の兆候も見られたといいます。
しかしどれだけボロボロになっても、女王の仕事を投げ出すことはありませんでした。
彼女は一度座れば、二度と立ち上がれなくなることを恐れたのか、休むことなく、何時間も立ち続けて政務に当たりました。
医師に自分の体を診断させるのも固く拒んだといいます。
彼女はすでに自分の死期を悟っていたのかもしれません。
その後、エリザベス1世は、スコットランドのジェームズ6世を後継者に指名したのち、1603年3月24日(69歳)に静かに息を引き取りました。
死後の解剖が行われなかったため、正確な死因については定かでありません。
一説には、がんや気管支炎が原因だったとする意見もあります。
しかし、数十年にわたるメイクの蓄積が、彼女の死期に関係していた可能性は高いでしょう。
※この記事は2022年9月に掲載したものを再編集してお送りしています。