食べ放題でも利益が出るカラクリ
当サイトは2023年6月24日付記事『焼肉の食べ放題、3千円台&100種類でも店側は利益が出る収益構造…材料費率30%』で、食べ放題メニューは店側が適正な水準の利益を得られる形態である理由を解説していたが、以下に再掲載する。
※以下、数字・時間表記・固有名詞等は掲載当時のまま
――以下、再掲載――
数千円でバラエティに富んだメニューを好きなだけ食べることができる焼肉チェーンの食べ放題コース。食べ盛りの子どもがいるファミリー層などにとっては、ありがたい存在だが、ユーザー側に大きなメリットがあるということは、裏を返せば店側は損を被っているのではないか。そんな考えが頭をよぎるが、実は店側もちゃんと利益を確保できているケースが多いようだ。では、なぜ低価格で豊富なメニューを揃えても利益を出せているのか。そのカラクリについて探ってみたい。
焼肉チェーン各社は食べ放題メニューを重要な集客のアイテムに据えている。たとえば、全国に約300店舗を展開する「焼肉きんぐ」は、100分食べ放題の「きんぐコース」(3498円/税込、以下同)、「プレミアムコース」(4378円)、「58品コース」(3058円)を提供。「きんぐコース」には、「焼肉きんぐ 四大名物(東)」の「ハラミステーキ」「壺漬け一本ロース」「きんぐカルビ」「炙りすき焼カルビ」などのほか、牛・豚・鶏の精肉やホルモン類はもちろんのこと、海鮮類やホイル焼き、キムチ類や「鶏唐揚げ」「ひとくちニラチヂミ」「カリッとろたこ焼」「焼肉屋さんの厚切りハムカツ」といった一品料理、サラダ類、スープ類、冷麺、「石焼ビビンバ」や「旨辛カルビクッパ」など100品以上が揃えられている。
全国に約600店を展開する「牛角」は、「70品食べ放題コース」(3498円)、「牛角90品食べ放題コース」(3938円)、「堪能100品食べ放題コース」(5368円)を提供。「90品食べ放題コース」では、同店自慢の「牛角旨カルビ」「熟成王様カルビ」「ねぎ塩豚カルビ」に加え、「たっぷりお野菜のミニビビンバ」や子供向けの「キッズカレープレート」、「抹茶アイス」や「杏仁豆富 いちごソース」「カットパイナップル」といったスイーツも揃えられている(デザートはいずれか1品)。
約150店舗を展開する「安楽亭」は、「パワー焼肉コース」(3498円)、「大満足安楽亭コース」(4378円)、「極ゴージャスコース」(8778円)などを提供。「パワー焼肉コース」には、「バーベキューカレーカルビ」「焼きしゃぶカルビ」「特製タッカルビ」のほか、サラダ各種や「ビビンバ」「ナムル盛合わせ」「雪見だいふく」などが揃えられ、さらにソフトドリンク飲み放題もついている。
そんな大盤振る舞いの各チェーンの食べ放題コースだが、気になるのは「きちんと採算が取れているのか」という点だ。食べ放題コースのみをみれば赤字だが、集客のアイテムに据えることで店側にとってはトータルで収益拡大につながるため提供しているという可能性も考えられるが、カラクリはどうなっているのか。外食チェーン関係者は言う。
「収益構造は各チェーンによってまちまちなので一概にはいえないが、チェーン企業は仕入れる量が大量で、かつ特定の業者から安定的に継続して購入するので、一般の人々が想像する以上に低い金額で仕入れている。また、食べ放題とはいっても一人当たりが食べる量には限界があり、たとえば子ども2人と両親の家族4人分を注文したとして、コスパ的なお得感を感じる割には一人当たりに平均すると『それほど食べていない』という例も少なくない。
ただ、食べ放題コースだけ見れば、やはり店側にとってはそれほど利幅は大きくないだろう。実は食べ放題を選ぶ客でも、それだけを注文するという客は少ない。特にアルコール類などのドリンクは利幅が大きめで、客も『食べ放題で得しているからドリンクは多めに注文しても平気』というかたちでドリンクに対して財布の紐が緩みやすく、そこで一定程度稼いでいる面はあるだろう」
自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に聞いた。