大きな狙いはアプリの利用者増か

 では、なぜガストは利益の圧迫要因となりかねない半額値引きキャンペーンを大々的に展開するのか。

「半額キャンペーンの対象となるのは、ビールと子ども向けのキッズプレートを除けばハンバーグとピザのみですが、たとえば家族やグループでガストに行ってそれだけを注文するというケースは少なく、大抵はサラダや『山盛りポテトフライ』などのサイドメニューやご飯もの、デザートなど、他の料理も複数注文しますし、『ハンバーグが半額になるので、それでお金が浮く分、もう一品追加で注文しよう』という行動が生じることも期待できます。半額キャンペーンでお客の来店を誘い、半額対象以外のメニュー以外のものを多く注文させるというのが狙いであり、トータルで見れば利益的にはメリットのほうが大きいでしょう。店舗型ビジネスは、何よりお客に店に来てもらわなければ何も始まらないため、大きな集客を達成できただけで成功という面もあります。

 それ以上に大きな目的としては、アプリ利用者の増加だと思われます。半額キャンペーンにつられて店に来て、クーポンの利用には原則アプリのダウンロードが必要だと考えてダウンロードするお客も一定数いると思われ、『すかいらーく』としては、まさにそれが狙いでしょう。日々、頻繁にアプリ上でクーポンを配布していても、アプリの利用者が少なければ効果は限定的ということになってしまいます。また、『すかいらーく』のアプリはバーミヤンやジョナサンなどグループ内の他のチェーンのクーポンも一斉に配信しているため、グループ全体でのお客の囲い込みにもつながります。

 ただ、たとえばサイゼリヤはEDLP(Everyday Low Price)型で“毎日・全商品が安い”という方針のもとでクーポンを配布しておらず、マクドナルドも以前と比べて大幅な値引きで集客するという戦略とは距離を置いているように、外食業界の勝ち組は脱クーポン依存のスタンスを強めています。クーポンを乱発すると、クーポンを出さないとお客が来なくなるという悪循環が生じるリスクがあるため、『すかいらーく』も今後、クーポンなしでも常にお客が足を運んでくれるような施策にシフトしていく可能性はあるでしょう。さらにいえば、近年のガストは、特段に安いともいえず、かといってワンランク高価格帯の『ロイヤルホスト』のような特別感・贅沢感もなく、やや中途半端な立ち位置になりつつあり、お客に選ばれる理由が薄くなっている印象が否めず、抜本的な改革が必要かもしれません」(外食チェーン関係者)

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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