また彼女が指摘しているキャラバン隊についても、メキシコ南部でおよそ4000名から成るキャラバン隊が3隊見つかっており、米国の国境に向かっている。更に、1500名から成るキャラバン隊も見つかっている。即ちキャラバン隊が消滅することは難しい。彼らは集団で移動すれば途中で追いはぎの被害を受けることもなく、警察も彼らの取り締まりを控えようとする傾向にある。
なぜなら数千人から成る不法移民を警察が食い止めるのは無理で、軍隊を動員しない限り、彼らの進行を阻止することはできないからである。
フェンタニルの密輸を阻止することも不可能である。メキシコで蔓延っている麻薬組織は政治家、警察、税関僚などと癒着しており、それを敢えて取り締まろうとすれば大統領の生命でさえも危ういものとなる。
シェインバウム大統領にとって、トランプ氏が要求しているような不法移民の取り締まり削減やフェンタニルの米国への密輸を抑えることは不可能であるということを彼女は知っている。
メキシコも米国からの被害を受けている彼女は逆に米国から被っている被害の深刻さを挙げている。その一つが、メキシコで検出されている武器の70%は米国から密輸入されたものであるということ。その影響で、メキシコ国内での犯罪が横行している。
例えば、今年10月に記録された殺害された人の数は2564人で、昨年同月と比較して6.6パーセントの増加となっている。即ち、一日に82人が殺害されていることになる。前任者のロペス・オブラドール氏の6年間の政権中に殺害された人の数は19万6000人という悲惨な記録となっている。(11月25日付「デバテ」から引用)。
25%の関税が適用されれば、メキシコ経済は半年でパンクするトランプ氏が要求していることを満たすことは容易ではないということをシェインバウム大統領は十分に理解しており、1月20日にトランプ氏が大統領に就任した時点での動向をメキシコ政府は非常に不安な面持ちで見つめている。