「多元宇宙」での計算?

 注目すべきは、Googleの量子AI部門の創設者であるハートムート・ネーベンが示唆した「多元宇宙」での計算の可能性である。彼は量子コンピューターが計算を行う際に、多元宇宙解釈に基づく「並行宇宙」を利用している可能性があると述べた。多元宇宙解釈は、量子力学の「波動関数の収縮」を否定し、観測時に宇宙が分岐するという仮説に基づいている。

 量子コンピューターは、従来のコンピューターが処理できない複雑な問題を解くために、量子力学を利用する。量子コンピューターは、従来の0と1のビットではなく、重ね合わせや絡み合い(エンタングルメント)を用いる。これにより、量子状態が変化する際の干渉パターンを利用して、問題の解決に近づく。

 量子力学には複数の解釈が存在する。例えば、コペンハーゲン解釈では、粒子は観測されるまで全ての位置に存在するとされる。一方、多元宇宙解釈では、観測による波動関数の収縮が起きず、観測時に宇宙が分岐すると考えられる。この仮説に基づけば、量子コンピューターは「並行宇宙」を利用して計算を行っている可能性があるという。

 Googleの量子コンピューターの成果は確かに技術的に画期的だが、現段階でこれが多元宇宙の存在を証明するものではない。量子コンピューターは量子力学に基づいて動作しているが、その解釈がどれであるかに依存しているわけではない。量子コンピューターの実用化が進む中で、こうした技術がどのように社会を変えていくのか、引き続き注目したい。

提供元・TOCANA

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