残念ながら、それはあまり考えられません。
手足がないスライムにとって長距離にわたり逃げる獲物を負い続けるのは困難です。
しかし希望はあります。
肉食動物の狩りのスタイルの中には「待ち伏せ型」というものも存在します。
その代表的な存在は「猫」です。
猫はネズミなどの存在を検知すると、巣穴の前や物陰に潜み、獲物が間合いに入った瞬間に素早くとらえます。
長距離の追跡が難しいスライムが捕食行動をするとなれば、猫のような待ち伏せスタイルをとることになるでしょう。
半透明な体の利点を生かして環境に溶け込み、前方配置した目で獲物が射程圏に入ったことを確認すると、跳躍を行い、巨大な口で一気に飲み込むわけです。
こうして、スライムの見た目に注目してみると、その内部には多細胞生物としての複雑な構造や、高度な感覚能力、さらには捕食者としての戦略までもが潜んでいる可能性が見えてきました。
「単純でかわいい」だけでは語れない、スライムという存在の奇妙さ、奥深さを感じることができたのではないでしょうか。
しかし、これでスライムの謎がすべて解けたわけではありません。
今回取り上げたスライムの生態的背景は、その生物学的特性をより深く掘り下げるための入り口にすぎません。
次回は「成功した生物スライム」と題して、なぜスライムがドラクエ世界においてあれほど豊富なバリエーションを持ち、数多くの個体が生き残っているのか、その生存戦略や環境適応の巧みさに迫ります。さらに、その次の回では、「スライム進化の系譜」として、スライムがどのような祖先から分化し、どのような進化の道筋をたどってきたのか、他の生物群との関係性を考察し最終的にはスライムの先祖の姿を探り当てたいと思います。
あの倒すとやたらレベルアップする金属の話もやっていきます。