テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』
さらに恥ずかしいのがテレビ朝日です。4月1日、NHKが夕方に謝罪と訂正放送をする半日近く前、朝の情報番組で視聴率トップの『羽鳥慎一モーニングショー』では同じ内容がパネルを使って伝えられ、アナウンサーは「アメリカのLAタイムズ紙によりますと」と伝えました。パネルには「検事“送金は扱う犯罪に該当せず”」「捜査担当検事『違法ブックメーカー側への送金は連邦捜査機関が扱う犯罪に該当しない」「連邦捜査機関が大谷選手に『捜査対象ではないことを保証したもの』」という説明コメントがありました。それをもとに国際弁護士らが解説していったのです。
ここで疑問が生じます。テレ朝は、なぜ数時間後にはNHKが訂正して謝罪することになる内容を報じてしまったのでしょうか。その答えは、実は報道の現場を知っていれば簡単にわかります。テレ朝のスタッフはNHKのウェブニュースか何かを読んで、オリジナルの英文記事を確認することもなく、このニュースを丸写ししたのではないでしょうか。こうなると、誤報を流したNHK以上に、他社の報道をそのまま確認もせずにコピペして報道してしまったテレ朝の行為は、倫理的に問題がありますし、報道に携わる人間としてすごく恥ずかしいレベルのミスだということになります。
さらにもっと恥ずかしいのは、テレ朝が訂正したのは放送から3日後の4月4日(木)だったことです。NHKが1日に謝罪・訂正放送をしたことはネットニュースでも伝えられており、それさえも確認していなかったのでしょう。
なぜこれがとても恥ずかしいことで、かつ深刻な問題なのかというと、報道機関として「事実」を確認して伝えるという根幹に関わる行為が、平素からとてもおろそかになっていることを示しているからです。正確な「事実」を伝えなければならないという報道機関としての役割を担っている以上、事実なのかどうかを必ず確認して裏付けをとって伝えるというのは基本動作です。少なくともLAタイムズの当該記事をよく読むというのは、絶対にやらなければならない最低限の行為でした。おそらく『モーニングショー』のスタッフはNHKのウェブニュースだけを読んで参考にし、自分たちでオリジナル記事を読んで確認することもせず転用したのだと思われます。これでは「こたつ記事」のウェブライターとなんら変わりません。報道機関としてのプライドも使命感もないということになってしまいます。
今回の件は単純ミスを原因とする誤報だといえます。幸い、この誤報で誰かの命が左右されたなどの深刻な影響はありません。誤報としても小さなものといえるでしょう。それでも今回の出来事が、情報・報道番組のなかでは一、二を争うほど信頼感が高い番組で起きたということで、テレビ全体に対する信頼が揺らぎかねないと危惧しています。『モーニングショー』での訂正・謝罪はおよそ30秒で、字幕も出さずにアナウンサーが最後に「お詫びして訂正します」という木で鼻をくくったようなコメントを述べるだけでした。原因にも再発防止策にもまったく触れていません。
こんなことを繰り返していては、ますますテレビへの信頼は失われてしまいます。NHKの原稿を丸写しするだけの安易な報道をしていたのであれば、それを公に認めて、報道機関としての使命に立ち返って、再び同じことが起きないようにしてほしいものです。関係する人たちには今回のことをぜひ深刻に受け止めてほしいと思います。
(文=Business Journal編集部、協力=水島宏明/上智大学教授)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?