財政金融政策の手詰まりから、30年ぶりとか50年ぶりとかの円安を記録し、日本経済のドル建て価値が続落しています。GDPはドイツに抜かれて4位、さらに26年にはインドにも抜かれて5位まで落ちるそうです。物価も上がる一方で、内閣支持率の低下にはそうした背景もある。

閣僚、政務三役の問題は、首相を含め「財政金融政策を含めて、迷路にはまり込んだ日本を再建できる政治人材が乏しい」というジャパン・プロブレム(日本問題)の一角に過ぎない。

新聞の社説の見出しを並べますと、「財務副大臣辞任/規範意識の低さにあきれる」(読売新聞)、「危機感を欠いた首相の傍観」(毎日新聞)、「連続辞任は順送りのツケだ」(日経新聞)と、岸田政権のガバナンスの欠如にあきれ果てています。木を見ても森を見ていません。

私はそういうレベルの政治的問題ではすまないと思います。公職選挙法違反のネット広告利用(柿沢未途副大臣)、経営する会社の税金滞納・差し押さえ(神田憲次副大臣)、女性との不適切交際(山田太郎政務官)と、不祥事が様々な分野にまたがっています。

洋上風力発電に悪乗りして逮捕された議員もいる。閣僚から政務三役までが多種多用な犯罪、不祥事をやってのけているのをみると、氷山の一角が浮上しているにすぎない。「適材は誰、適所はどこ」「遅れた更迭」「任命責任は」(朝日新聞)という次元の状況ではなさそうだ。

岸田首相が「任命責任を重く受け止めている」といっても、任命責任という言葉ほど空疎なものはない。重く受け止め、辞任するということでもない。多くの首相も「任命責任は私にある」といい、結局、その場をすり抜けただけでした。追及する野党も「任命責任の取り方」とは、具体的に何なのかを考えていない。「任命責任」は空箱なのです。

神田氏も「政治家として説明責任は果たしていく」と述べました。「説明責任」も空疎な空箱で、なんの責任もとらないことを意味します。閣僚も政務三役も、派閥からの推薦で決まるのでしょう。適材かどうかは後付けの理屈です。なんとでもこじつけられる。

そうした議員を押し込んだ派閥のトップに本当の責任がある。派閥でも、当選回数で候補を決め押し込んでくる。適材を探しても、人材がいないのです。実態を言えば、岸田首相に責任を負わせることはできない。

党幹部が「不祥事の中身と所轄官庁がばっちりと重なってしまっている。この政権の『身体検査』(身ぎれいかどうかのチェック)はどうなっているのか」と語っていると、朝日新聞は書いています。恐らく「身体検査」などをすれば、ほとんどの議員に問題があることが分かる。

だからまともな「身体検査」なんかしないし、したら適格者に欠く。だからばれたら辞める。そういう人事を繰り返している。そこを掘り下げて書くのが政治ジャーナリズムの責任です。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年11月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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