海外に出てくる日本人、特にカナダには女性比率が8割ですが、多くは人生の中で経験値を高めたいという方が多く、海外での仕事の経験を生かして日本で活用したいという方がほとんどです。かつては語学力が主たる理由でしたが今では自分が日本でやってきた仕事を海外でやるとどうなるのか、という自分への修業的な目的が増え、良い傾向が見られます。

正直、語学を目的に来られてもどこに照準を置くか次第ですが、個人的にはあまり意味がないと思います。理由は海外に来ても深い英語を話すことは少なく、1年すれば日本に帰り、英語との縁はほぼ切れるのです。時々若い人に意地悪な質問をします。「英語、話していますか?」「はい、学校の友達と」「それはもしかして韓国人やブラジル人?」「そうです」「カナダ人と話したことある?」「先生以外はほとんどありません」「家では?」「ホストファミリーはフィリピン人でほとんど話さないです」。

日本人の若者が海外に出る理由の大きな理由の一つは賃金格差ですが、もしも日本で物価水準が修正され、賃金が末端まで上昇するようになり、円高時代が再びやってくれば海外に出るモチベーションは下がるかもしれません。一方、人生の経験値を求めて海外に出たいという野心を持った人はどんどん出た方がよいでしょう。

ところでカナダは学生ビザの発給数が多すぎてそれら海外学生を受け入れる住宅が圧倒的に不足する事態となり、今年、突然カナダ政府が今後2年間、学生ビザの発給を35%減らす、と発表しました。海外に出たいけどその枠組みに入ることが今後、難しくなるわけです。アメリカはそもそもワーキングホリディ制度がない訳で北米への若者の足掛かりはやや難しくなりそうな気配です。

今後、日本人の若者に求められるのは更に研ぎ澄まされた世界に通用するスキルであり、それをプレゼンテーションするぐらいの能力とノウハウを持ち合わせることだと思います。とても難しいことですが、それをやりぬいてこそ、日本人が海外で本当に活躍できる時代が到来したとも言えるでしょう。

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では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月12日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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