黒坂岳央です。

日本の高度経済成長において、中卒は金の卵と呼ばれ、流行語に選ばれたこともある。金の卵の職種はブルーカラーやサービス業が中心であり、工員や職人になるものが多かった。

誰もが当たり前のように大学に進学する頭脳労働社会の現代、生成AIの登場や国内の産業構造の転換でホワイトカラーは一部の優秀な人材を除いて人余りが続いており、今後もこの公算が大きい。

人手不足があちこちで聞かれる一方で、事務職や単純作業は少ない採用枠に多くの応募者が殺到している歪な状態となっている。これは日本だけではなく、中国でも似たような状態になっている。今やノンスキルのホワイトカラー職はオワコンであり、逆にブルーカラー職こそに強力なニーズがある。

10年後の日本において、中卒は再び金の卵になると予想する。

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深刻化するインフラ人員

日経新聞は2050年に新築の家を建てることが難しくなるという記事を出した。人口減少と空室増加で需要の減少が見込まれるが、それ以上のペースで供給力が低下するという。

家造りは3Dプリンターで対応できないか?という意見も見られるが、地震が多く地盤の状態までしっかり考慮しないといけない日本の建築において果たして3Dプリンターだけで対応できるかは疑問が残る。また、問題は新規の住宅の建設だけではない。水道や橋などの街を支える社会インフラの担い手も急減している。

高度なインテリジェントビル建設などを除けば、大工に一流大卒や難関資格は必要としない。厚生労働省の調査によると、大工は中卒、高卒をあわせて74.6%を占め、大卒はわずか14.9%に過ぎない。また、入社前に求められる訓練や実務経験は「必要がない」が35.8%を占めている。

デジタル空間で圧倒的に強い生成AIでも、現実世界で建築業につくことはできない。建築は労働集約型産業であり、人手が必要になる職種だ。しかも高い学歴は必要なく、人材が減って需要とのバランスが悪くなれば確実に給与は上がる。勉強を真剣にやる気もなく、単にモラトリアムで大学を出て単純作業を奪い合うくらいなら、中卒で大工を目指す方が本人にとっても、そして日本経済全体で見てもよほど合理的だ。