黒坂岳央です。

「今の人生を変えたい」そのように望む人がまっさきにやろうと考えること、それは「やる気を出す」ということである。だが人生を激変させるために必要なのはやる気ではなく、圧倒的に好奇心こそが重要だと思うのだ。

動物は幼い頃は好奇心で色々な行動をするが、成長するとどんな動物も現状維持になる。昆虫は生まれつきプログラムされ、そもそも思考力を持たない。だが人間だけは違う。成人に成長したあとでも好奇心で行動や習慣を変え、そして新しい扉を開く力を持っているのだ。

自分自身、人生を振り返った時にいくつか人生を激変させるターニングポイントがあったが、いずれのタイミングでもやる気ではなく好奇心が自分を助けてくれたという強い実感がある。その根拠を取り上げたい。

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やる気で人生は変えられない理由

世の中には「いかにやる気を出すか?」という重要性ばかり取り上げられているように思える。YouTubeではモチベアップ動画、書籍でもやる気を高める本、リアルの場では自己啓発セミナーが開催されている。確かにやる気は瞬間的に大きく炎を燃やすような力がある。学生時代は誰しも、試験前に一夜漬けを頑張ったり、夏休みが終わる直前に慌てて宿題を終わらせたという経験を持っているだろう。これらはやる気によるエンジンでなし得たことだ。

しかし、問題はやる気はまったく持続力がないという点にある。理由はやる気は体力や感情に直結しているため、体力がつきて疲れを感じたらやる気も尽きるし、怒ったり悲しんだりするきっかけがあればその時点でやはりやる気は消える。そんな頼りないやる気を拠り所にして、人生を大きく変えることは論理的に戦略が間違っている。

どれだけ心に火をつけるきっかけがあったとしても、それを1年間持ち続けられる人はいない。

好奇心が人生の扉を開く

やる気は極めて短命だという話をした。その一方で、目を向けるべきは好奇心である。好奇心はまさしく、人生の扉を開いてくれる可能性を秘めている。

「人生を変える」という抽象概念を厳密化すると、「コンフォートゾーンからの脱出」と言い換えることが可能だ。尚、コンフォートゾーンについて解説すると、自分が心地良いと考える環境のことである。人間は「いつもと同じ場所で気心のしれた人間関係」に安心感を覚える。心理的には安心でもこれが続けば思考や価値観、認知はドンドン硬直化し、変化に対して脆弱になってしまう。つまり、心理的には「安心」ではあっても資本主義社会という目線でいえば「安全」とはいえない。

話を戻そう。好奇心を端的に言えば「新しい世界への興味関心」である。未知の世界に触れた時、「よくわからないから自分にはいらない」と考える人が大半である。一方で好奇心が強い人は「未知だからこそ知りたい」と考えるのだ。

たとえば直近で世間を賑わせる未知の領域としては、生成AI、新NISA、Bitcoin 現物ETFなどがキーワードとしてあげられる。こうしたものに対して「面白そうだから調べて実際に体験してみよう」と行動する人と「難しそうだからいらない」と敬遠する人とでは、5年後、10年後にそれぞれ立って見ている風景に大きな差がついてしまう。

格差とはこうした小さな起点がきっかけでつくものである。ある投資家の対談記事を見たのだが「偶然見つけた小さな企業に心が留まり、四六時中そのことについて調べて大きな可能性を感じたのでフルインベストメント。結果、大勝したことで勤務先を退職。今は資産運用だけで生活できている。あの時の偶然の出会いに感謝している」といっていた。まさしく、ほとんどの人が見過ごす心が留まる好奇心がこの人物の人生を変えたのだ。