2.HTS(Hay’at Tahriral-Sham)はシリア内戦におけるイスラム主義勢力の中で最も影響力を持つグループの一つ。かつて「アル=ヌスラ戦線」としてアル=カイダと提携していたが、現在は独立している。過激派イスラム主義者を中心とした勢力。元アル=ヌスラ戦線のメンバーが主体。シリア国内外からのジハード主義者が加わっている。目的はイスラム法(シャリーア)に基づく国家を樹立すること。アサド政権の打倒が目標だが、他の反政府勢力(特にSNA)やクルド勢力とも対立している。拠点は主にシリア北西部のイドリブ県。イドリブはHTSの実質的な支配下にあり、組織が行政機構や税制を運営している。

ちなみに、ヘルベルク女史は「HTSはイスラム主義組織であり、国際的なジハード主義者ではない。彼らの議題は国際的なジハードではなく、国家的なイスラム主義だ」と説明している。米国はHTSの指導者アブ・モハメド・アル=ジュラニに1000万ドルの懸賞金をかけている。

3.SDF(Syrian Democratic Forces)はクルド人勢力が主導する多民族混成部隊で、アメリカの支援を受けて活動している。シリア内戦における主要な対IS(イスラム国)勢力として知られている。主体はクルド人民防衛隊(YPG)であり、女性部隊(YPJ)も含まれている。アラブ人部隊やその他の少数民族(アッシリア人、トルクメン人など)も参加。推定約5万~6万人の戦闘員を抱えている。目的はクルド人の自治権確立を目指す一方、シリア全体の安定化を掲げている。IS(イスラム国)の掃討が中心的な役割だったが、現在はトルコやSNAとの戦闘が課題となっている。拠点はシリア北東部(ラッカ、ハサカ、デリゾール)を中心に広範囲を支配。

上記の3勢力はアサド政権打倒で一致しているが、それ以外では対立。例えば、トルコが支援するSNAはクルド勢力(特にSDFのYPG)を敵視。北シリアの支配地域を巡り衝突を繰り返している。また、HTSとSNAは反アサドだが宗教的・戦略的な相違からしばしば対立。HTSとSDFは地域的には接触が少ないが、イデオロギーが異なり、根本的に対立している。