英国の「キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)」で教鞭を取るテロ問題専門家のペーター・ノイマン教授は7日、ドイツ民間ニュース専門局ntvとのインタビューに応じ、「シリアを支援してきたロシアとイランが今回、アサド政権を支援していないことに驚く。イランは2011年、反体制派の反乱に守勢にあったアサド政権を支援してきた。そして2015年にはロシアが介入したことでアサド政権は有利となって反体制派を鎮圧してきた経緯がある。その両国がアサド大統領の要請にもかかわらず、今回ほとんど支援していないのだ」と指摘している。

ちなみに、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は6日、内戦下のシリアから、アサド政権の後ろ盾であるイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」幹部や外交官らが退避を始めたと報じている。一方、ロシアはウクライナ戦争で兵力を大きく割かれているだけに、シリアの反体制派勢力への攻撃に兵力を充てる余裕がなかったのかもしれない。ロシアが今後、アサド政権を擁護するか見捨てるか不確かだ。

父子2代、50年以上の独裁政権が続いてきたアサド政権崩壊後のシリア情勢はどのようになるだろうか。シリア問題の専門家クリスティン・ヘルベルク女史はntvとのインタビューで、「シリアは2020年以降、4つの勢力に分割されている」と指摘している。具体的には、シリア内の主要な武装勢力はアサド政権のほか、SNA(シリア国民軍)、HTS、およびSDF(シリア民主軍)だ。アサド政権が崩壊したとすれば、SNA、HTS、SDFの3武装勢力の動きがシリアの今後を左右する。

1.SNA(Syrian National Army)はトルコが支援する反政府勢力の統一組織だ。以前は「自由シリア軍(FSA)」と呼ばれていたが、2019年に再編され、「シリア国民軍」として組織化された。主にスンニ派アラブ人を中心としたシリア人傭兵だ。トルコの軍事支援を受けており、訓練や装備の提供も受けている。目的はアサド政権の打倒と共に、トルコ政府の政策に基づき、クルド勢力(特にSDFの主要構成勢力であるYPG)との戦闘が主な活動だ。活動地域はシリア北部(トルコ国境沿い)だ。