韓国の戒厳令未遂事件の関連で、コロナ騒動のとき西浦博氏の「クーデター」が話題になっている。彼の「何もしなかったら42万人死ぬ」というシミュレーションは、緊急事態宣言という有害無益な「戒厳令」をもたらした。

2020年4月15日の記者会見(NHKより)

思考実験で「42万人死ぬ」と予測したクーデター

西浦氏のモデルは単純だった。武漢とドイツで一時的に計測された基本再生産数Ro=2.5という仮定が世界中で一定だと想定し、世界中で新型コロナに免疫をもつ人がゼロだとするとどうなるか、という思考実験だった。その元になるデータのフィッティングもしていない。

これはイギリスのファーガソンらのモデルの数値を置き換えただけだった。このモデルではRo=2.4と仮定し、8月までにイギリスでは51万人、アメリカでは220万人が死亡すると予測した。

ファーガソンの予測

2020年3月に西浦氏が専門家会議で発表した推定はこのパラメータを置き換え、「オーバーシュート」という造語で、Ro=2.5で60日で人口の約80%が感染すると推定した。その0.4%が死亡すると42万人だが、厚労省がその死者数の発表を止めたので、4月15日に記者会見を開いたのだ。

専門家会議の西浦モデル

専門家会議はそれを制止できず、厚労省も役所でクラスター班の見解として記者会見させた。ここで西浦氏は「感染拡大の防止策を実施しなかった場合、重症患者が累計85万3000人になり、その49%が死亡する」と発表した。

死者数はいわなかったが掛け算すればわかるので、私がJBpressで「新型コロナで42万人死ぬという西浦モデルは本当か」と書いたら大反響を呼んだ。これは西浦氏も認めたように、政府の決定システムを踏み超えたクーデターだった。

暴走する現場を止められない官僚組織

西浦氏の予測は大幅にはずれ、60日後の死者数は800人。最大の被害を受けたのは営業停止になった飲食店だった。「8割削減」で死者が1/500になったとすれば驚くべき成果だが、実際にはほとんどの人は緊急事態なんか無視して行動した。