60人分の弁済処理が済んだとしても、被害に気が付いていない顧客が他にもいるでしょう。全支店の貸金庫をチェックしてみる必要がある。金融庁はそういう指示をだすでしょう。指示は全金融機関に及ぶかもしれません。とにかくとてつもなく、厄介な窃盗、盗難事件です。
ふと思ったのは、「日銀こそ政府・財務省の貸金庫化しているのではないのか」という死角です。三菱UFJの貸金庫事件は「利用客に貸すための貸金庫」です。「貸金庫化している日銀」というのは、日銀が政府・財務省の貸す資金を用意する金庫のような存在になっている」との意味です。
「現金の保管場所としての貸金庫」(金融機関)と、「資金(財政資金)を政府に貸すために用意しておくための金庫」(日銀)です。財務省は財政資金を調達するため、国債を発行すると、日銀が短時日でこれを流通市場から購入(残高は590兆円)し、その分が市場に資金供給されます。日銀は円資金をいくらでも、市場に供給できます。そのほかETF(上場投資信託)など70兆円(時価)を購入しています。
アベノミクスの主軸であった異次元金融緩和(2013年から)で、マネタリーベース(通貨供給量)は2024年には700兆円近くに急増しました。植田新総裁になって(2023年)から、異次元金融緩和の修正に着手したものの、そんなテンポではあまりにも遅い。
物価の安定、決済機能の保全、信用秩序の維持などが日銀の役割であるとしても、異次元緩和策が導入されてからの日銀は政府・財務省の「貸金庫」に変身してしまったのです。日銀の「貸金庫」には、600兆円の国債、70兆円のETFなどが資金供給の見返り(担保みたいなもの)として、うず高く保管されている。
消費者物価は日銀目標の2%を超えて1年以上になるのに、「賃金と物価上昇の好循環」を確認するにはまだ時間がかかるとかいって、利上げには尻込みしています。12月にも次の利上げがあると予想されていたのに、1月以降になりそうです。インフレ状態だと、税収が増えるので財政当局は歓迎するのです。