三菱UFJ銀行で行員が4年半にわたって、貸金貨から顧客の現金や貴金属を盗んでいた事件が起きました。被害総額は時価10数億円だそうです。60人分の資産で、減っていることに気づいた顧客の問い合わせで発覚しました。まあ、盗まれていることに気が付かない富裕な利用客が大勢いるのに驚きます。
その後、続報らしい続報がないところをみると、被害額の確定、証拠固め、法的な解釈などに手間取っているのでしょう。貸金庫には銀行が損害保険をかけているにしても、貸金庫の管理責任を担っていた行員の犯行ですから、頭取以下10数人のトップらに1人平均1億円、計10数億円を弁償させたいくらいのとぼけた事件です。よくある「役員賞与30%を6か月、返済」などという甘いものでは済まない。
現金は預からないということになっていても、同行の貸金庫規定は「①公社債、株券、契約書類、権利書類など②貴金属、宝石、手形、小切手、それらに準じるもの③預金通帳、印鑑など」を預かることになっているそうです。貴金属などは、購入した際の領収書を提出してもらえば、証拠になる。公社債、株券も取引を示す書類があるはずだし、まあ犯人はこれら盗むことはないでしょう。
問題は現金です。現金は原則は預からないことになっているにしても、貸金庫規定には「現金は預からない」と明記していないので、銀行側に弁償責任があるという専門家もいます。現金の保管場所にすることに利用者が魅力を感じ、貸金庫を使う人が多いに違いないし、銀行側は見逃していたのかもしれない。
通常は、貸金庫の中身を銀行がチェックすることをしないから、いくら保管されていたのかも分からない。「5億円、保管していたから、5億円を弁済せよ」という利用客がいたとしましょう。貸金庫が一般的なサイズなら1億円でも無理だから、虚偽の申告と分かるにしても、被害額の確定は簡単ではない。