ではその原因は何なのか。多くの人が指摘するのは、3月中旬にEUからウイルスが入ってきたことだ。これは国立感染症研究所も指摘している。
渡航自粛が始まる3月中旬までに海外からの帰国者経由(海外旅行者、海外在留邦人)で “第2波” の流入を許し、数週間のうちに全国各地へ伝播して “渡航歴なし・リンク不明” の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測される。
この「感染の輸入」が3月21日のEUからの入国禁止、26日のアメリカからの入国禁止で止まったことが、ピークアウトの原因だったと思われる。感染を止めたのは水際対策であり、国内の飲食店の営業停止などはほとんど効果がなかった。
霊感商法の論法でいうなら、入国拒否が遅れていたらEUのような感染拡大が起こっていたかもしれないが、爆発というほどではなかっただろう。それは4月に感染が急にペースダウンしたことをみてもわかる。日本の死亡率は3月末でイタリアの1/100だったのだ。
これが日本とEUの最大の違いである。EUでは国境閉鎖してロックダウンしたあとも感染が拡大して死亡率が上がったが、日本はほとんど上がらなかった。
その原因(山中伸弥氏がファクターXと呼ぶ)については諸説あるが、感染率や重症化率の大きな差は抗体などの獲得免疫だけでは説明できない。日本人にとっては、コロナは新しいウイルスではなかったかもしれないのだ。
8割削減が空振りになった原因は、複雑な自然免疫を無視して獲得免疫だけで機械的に感染が拡大するSIRモデルで考えたことだった。その教訓を学んで自然免疫のメカニズムを解明することが、今回の騒ぎの高価な教訓である。