- 工業の平均時給
前回は平均時給に相当する労働時間あたり雇用者報酬について国際比較してみました。
生活実感に近い購買力平価でドル換算した数値で比較すると、日本は2021年で28.3ドルとなり、OECD33か国中21位、G7中最下位、OECD平均値35.9ドルを大きく下回る立ち位置のようです。
アメリカ(48.9ドル)、フランス(49.2ドル)、ドイツ(48.6ドル)と比べても大きな差がついています。
今回からはもう少し詳細に産業ごとの平均時給についてご紹介していきます。
また、OECDの産業区分についても、国際標準産業分類(ISIC REV4)との対応を改めてご紹介します。
まず、今回は比較的生産性の高い工業の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)についてです。
図1が、日本の各産業の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)の推移です。
労働時間あたり雇用者報酬は、産業別の雇用者報酬(Compensation of employees)を、産業別の総労働時間で割った数値です。
本来であれば、雇用者報酬ではなく賃金(Wages and salaries)を利用すべきですが、日本の産業別賃金が公開されていないため、雇用者報酬を用いています。
雇用者報酬は、労働者に分配される賃金に、企業側の負担する社会保険料などの雇主の社会負担(Employers’ social contributions)を加えたものです。企業側から見た人件費に相当すると考えれば良いと思います。
また、この統計には個人事業主(Self employment)は含まれず、雇用者(Employees)の数値となります。
OECDの統計データでは、労働者(Employment) = 雇用者 + 個人事業主となりますが、今回は雇用者に限った統計データとなります。
工業(赤)は、全産業の平均値(黒)よりやや高い水準が続いて言いますね。
金融保険業や情報通信業よりはかなり低く、近年では専門サービス業、建設業、公務・教育・保健と同程度です。
1990年代後半から横ばい傾向が続いていましたが、2010年あたりから上昇傾向となっていて、2021年には3,100円くらいです。
- 工業とは何なのか?
OECDの統計上の産業区分である工業には、そもそもどのような業種が含まれるのでしょうか。
まずは改めてご紹介したいと思います。
OECDの産業区分では、B~E Industry, including Energyと表記されます。
このB~Eというアルファベットは、国際標準産業分類(ISIC: International Standard Industrial Classification of All Economic Activities)に基づくものと考えられます。
この国際標準産業分類における項目との対応をご紹介します。
なお、日本語表記は下記サイトを参照しています。
国際連合 Classification on economic statistics ISIC rev4 Jp
表1 工業の産業区分
OECD 産業区分 ISIC REV4 大分類 ISIC REV4 中分類 B-E 工業 Industry, including Energy B 鉱業及び採石業 Mining and quarrying 05 石炭・亜炭鉱業 06 原油及び天然ガス再修業 07 金属鉱業 08 その他の鉱業及び採石業 09 鉱業支援サービス業 C 製造業 Manufacturing 10 食料品製造業 11 飲料製造業 12 たばこ製造業 13 織物製造業 14 衣服製造業 15 皮革及び関連製品製造業 16 木材、木製品及びコルク製品製造業 (家具を除く) わら及び編み物素材製造業 17 紙及び紙製品製造業 18 印刷業及び記録媒体複製業 19 コークス及び精製石油製品製造業 20 化学品及び化学製品製造業 21 基礎医薬品及び医薬調合品製造業 22 ゴム及びプラスチック製品製造業 23 その他の非金属鉱物製品製造業 24 第一次金属製造業 25 金属製品製造業 (機械器具を除く) 26 コンピュータ、電子製品、光学製品製造業 27 電気機器製造業 28 他に分類されない機械器具製造業 29 自動車、トレーラ及びセミトレーラ製造業 30 その他の輸送用機械器具製造業 31 家具製造業 32 その他製造業 33 機械器具修理・設置業 D 電気、ガス、上記及び空調供給業 Electricity, gas, steam and air conditioning supply 35 電気、ガス、上記及び空調供給業 E 水供給業、下水処理並びに廃棄物管理及び浄化活動 Water supply; sewerage, waste management and remediation activities 36 水収集・処理・供給業 37 下水処理 38 廃棄物収集・処理・処分活動、材料再生業 39 浄化活動及びその他の廃棄物管理業務この工業の大部分は製造業となります。
OECDのデータによれば、2021年のGDPを見ると工業は128兆円で、そのうち製造業は113兆円となります。
また、労働者数(Total employment)では、工業が1,107万人で、そのうち製造業は1,044万人となります。
ISIC REV4の産業分類については、下記サイトにもまとめていますのでご参照いただければ幸いです。(参考記事: 国際標準産業分類)
ビジネス
2024/12/10
工業の平均時給:比較的高い日本の水準
『アゴラ 言論プラットフォーム』より
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