こんな語り口で「本を読んで考え、理解する。大切なのは『自分で考える』ということです。「スマホはボタンを押すだけで人をおもしろがらしてくれます。ところが本は自分『読む』ことをしないと、おもしろさはわかりなせん」。こんな調子で読書の楽しみを説いています。

毎日新聞はどうでしょうか。見出しは「こどもまんなか社会/『未来を育む意識を広げたい」と、いわゆる社説調の堅苦しい表現です。読んでいくと、静岡県富士市で、子どもの場所づくりに取り組むNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」の紹介があり、これはなかなかいいと思います。

「空き店舗を使って『おもしろ荘』と名付けたスペースを設けている。放課後に子どもたちが集まり、思い思いに遊んだり、宿題をして時間を過ごしている」、「監視役になるのではなく、黒衣にてっして時間を過ごしている」、「こどもたちと信頼関係を構築すると、心を開いた子どもたちは、虐待やいじめ、自傷行為を打ち明けるようになる」。

街に目だつ空き店舗にも、こんな活用の仕方があるのだなと、感心します。「学校現場では、子どもの悩みなどを十分に把握できていないのではないかと、代表の渡部さんはいう」。

読売新聞は「五感を高める体験を大切に」が見出しです。「10-17歳を対象にしたネット利用調査(こども家庭庁)では、1日の平均利用時間は5時間で、2年前に比べ30分延びた。スマートフォンへの依存が強まっている」と指摘しています。

「『なぜ』という疑問が浮かんでも、自分の頭で考えずに、スマホで答えを探そうとしているのではないか」、「仮想空間に長時間浸るのではなく、五感を通して得られる現実の体験を大切にしたい」と。「いきなり五感を大切に」には飛躍があるにしても、「五感」の大切さは正論です。

朝日新聞は「子どもの日」は素通りしています。「適正評価制度/もっと具体的に説明を」(経済安全保障政策の実施上の問題点)、「河村市長の発言/戦争は道徳では語れない」(祖国のために命を捨てるのは高度な道徳的行為だとの発言を問題視)の2本です。

安全保障政策や戦争論の問題も人間、あるいは将来、おとなになっていく子どもあっての話のはずです。社説で扱うテーマに関して、朝日流の優先順位のつけ方に首を傾げます。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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