私自身、ある知名度の高い学者と論争した際に随分そういうことをされたし、(私の勝利で)論争自体が閉じられた後も今日に至るまで、ファンネルの一部をなしていた歴史学者から執拗に中傷されている。それについては、以前こちらの記事でご報告した。

細谷氏が評価する東野氏の「オフェンス能力」に、こうしたファンネル的なオフェンスがどこまで含まれていたのかは、わからない。しかし一般論として、次のことが言える。

自身のフォロワーが暴走して、上記写真のような不当な攻撃を論争の相手にぶつけ始めたとき、インフルエンサーが「そういうことはやめてください」とツイートするか否かは、事態の収拾を左右する上で決定的に重要である。私はフォロワーを抑制する人の方が立派だと思うが、その場合SNSでの「オフェンス能力」は落ちざるを得ない。

当該部分をWebで読むことができるが、『中央公論』の鼎談での発言に従えば、東野篤子氏の場合はSNSの利用に際して、以下のようなスタンスで臨まれているそうである。

私に反論された人が意見を変えることは100%ありません。それどころか、恨みを抱いて余計に粘着してくる。それでも私の反論を見て「こう言語化すればいいんだ」「やっぱりこれが基本線なのだな」と思う人や、いかに歪んだ言説が広がっているかに気づく人もいると思うので、その輪が少しでも広がるように、と〔SNSでの発信を〕続けています。

強調は引用者

論争の相手が自分のツイートによって意見を変えることは「100%」ないが、そうした論争の様子を見て、自分のファンになる人がいる。そのために論争する、との趣旨である。すなわち「議論の相手ではなく応援団に見せるために発言します」ということだから、そうした姿勢は対話よりも、「ファンネルを飛ばす」行為につながりやすい。

上記したとおり、私もそうした人と論争したことがあるので、その際の私の対応の一例を挙げておく。SNSでの「オフェンス/ディフェンス能力」のあり方と、インフルエンサー/フォロワーそれぞれの責任について、議論する一助となるなら幸いである。

(ヘッダー写真は昨年の話題書より。なお、この記事は同書著者のファンネルとして書かれているわけではないので、誤解なきよう)

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2024年3月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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